213.いい加減にしろよ ページ33
突然聞こえてきた声に、海斗の動きがピタリと止まった。
私の服の中から手を抜くと、ゆっくりと体を起こした。
「もう一回聞くけど、何してんの?」
ズキズキとする頭を横に向けると、今にでも海斗に噛みつこうとする獣のような鋭い目つきをした無一郎がいた。
来てくれた安心が波のようにドッと押し寄せ、思わず涙が流れる。
「何って…。
見たら分かると思うけど?」
海斗の指が、私の耳をそっと撫でた。
『んっ…。』と声が漏れると、海斗は満悦の表情を隠さないでいるようだった。
私は辱めを受けている気分になり、この場から消えたくて仕方がなかった。
「やっぱ耳弱いんだ。
彼氏以外の男に触られて善がるとか、ヤバくね?」
「おい。」
いつの間にか無一郎が海斗の腕を掴んでいた。
ギリッという音が聞こえそうなぐらい強く…。
「いい加減にしろよ、クソ野郎が。」
空気がピリッと震えるぐらい、無一郎の怒りは頂点に達していた。
そのことは海斗にも伝わっているようで、顔が歪んでいる。
「ンだよ、殴んの?」
「Aが見える前で殴るわけないでしょ。
…というか、東雲が今までAにしてきたこと、法的手段に訴えるには十分な材料だと思うんだけど。」
「…はぁ?」
無一郎は空いている方の手で器用にスマホを操作し、とある画面を海斗に見せた。
「東雲のポストへの嫌がらせ、異常な数の着信件数、尾行してた時の時間や場所もメモとして記録してあるから。
まぁ、防犯カメラを調べれば特定できるだろうね。」
スマホには、日にちごとのメモがびっしりと記されていた。
そんなことをしていたとは知らず、目を丸くしてそのメモを見た。
「ついでに、今のこの状況も含めると、結構まずいんじゃない?」
「俺のこと、脅してんの?」
「脅す材料としては、十分すぎると思うけど?」
無一郎は優しい目を私に向けてくれた。
それだけで救われた気分になる。
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ひろか - あーー!もーー!興奮が収まりません!ちょくちょく出てくる原作の台詞とかもう最高でした!刀鍛冶編の「おい、いい加減しろよ、クソ野郎が。」の台詞には赤面でした!刀鍛冶編で、私の中で、top3には入る台詞だったのでもーあーあーって語彙力がなくなりました。 (3月9日 0時) (レス) @page47 id: 57ea2d5713 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - 海斗から助けた所がものすごくかっこよくてもっと無一郎の事好きになりました♥️ (5月8日 11時) (レス) @page44 id: 95d1cd5894 (このIDを非表示/違反報告)
もろん - 完結おめでとうございます!!(終わってほしくないよぉぉぉぉ)とっっっっっっってもオモシロかったです!! (2021年6月8日 14時) (レス) id: 2c8540451a (このIDを非表示/違反報告)
むむいむい君 - 完結おめでとうございます。いやもうマジで無一郎最高すぎる終わらないでーー (2020年12月12日 2時) (レス) id: fa7814fbb8 (このIDを非表示/違反報告)
無一郎 - 完結おめでとうございます!あの...また新しく無一郎くんの小説書いてもらえますか? (2020年11月21日 3時) (レス) id: 16e352d00b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2020年8月9日 19時