一途にも程がある その5【時透無一郎】

192.新婚さん？ ページ12

一緒に帰る途中、食材を買うためにスーパーに寄った。
さり気なくかごを持ってくれる辺り、さすがだと思う…。



『あ、きゅうりも買っていい？
冷蔵庫になかったよね？』



かごに入れる前に、無一郎に確認するためにきゅうりを見せた。
すると、彼はニコニコと私のことを見ている。
え？
聞いてる？



『無一郎？』

「んー？
なーに？」

『聞いてる？』

「ごめん、聞いてなかった。
Aに見惚れてた。」



あ、聞いていなかったようだ。
というか、聞いていない理由が…。
ボンッと赤くなっている私を他所に、持っているきゅうりを見て「きゅうり買うの？」と聞いてきた。



『うん。
安いし。』

「じゃあ買おっか。」



無一郎は私の手からヒョイときゅうりを取り、かごに入れた。
すると、「ごめんねぇ。」という声と共に、私たちの前にニュッと手が伸びてきた。



『あ、すみません。』



隣を見ると、おばあさんがきゅうりを持っていた。
ペコッと頭を下げると、そのおばあさんは微笑ましく私たちのことを見てきた。



「あらら、新婚さんかねぇ？
かわいらしい奥さんね。」



おばあさんの言葉を必死に否定するように、顔の前で手をブンブンと振った。
でも、無一郎は満更でもなさそうに、ピタッと私にくっついてきた。



「そうなんです。
かわいくて自慢の奥さんなんですー。」

「あらあら。」

『ち、違いますから…！
まだ大学生なので…！』



否定した私の声は、2人の耳には入っていなかったようだ。

193.結婚する？ 〜無一郎side〜→←191.クソ野郎

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す