LOVE BOX -北藤-

＊ ページ26

そして、季節は移り行き…。

北山は１８歳。

俺は、２５歳になった。

櫻の舞う景色に、初めての出会いを思い出し。

暑い夏のグラウンドに視線を向けて、元気いっぱいの北山の面影を探して。

北山の声がすると、耳が意識がそっちに向いて。

胸が…痛くなる。

ドアが開くたびに、北山じゃないかと期待して…突きつけられる現実。

自分で、突き放したくせに。

告白する勇気もなくて。

断られるのが怖くて。

傷つけるのが怖くて…距離を置いた。

気持ちを伝えたら…この胸の痛みはどうなってただろう。

保健の先生って…こんなにも生徒と接点がないんだ。

ここに来てくれない限り。

会いに行く理由がないことに…気づかされる。

「先生〜」

聞き覚えのある声に振り向いた。

でも…そこにいるのは…二階堂くん一人。

初めて会った時のことを思い出す。

「……っっ」

立ってられなくて、その場に座り込む。

「えっ！？先生！？どうしたんですかっ！？」

二階堂くんがそばに来て、背中を摩ってくれる。

「……やまっ」

「え！？」

「…北山にっ、会いたい…っ」

「先生…」

どうして、今まで我慢できたんだろう。

どうして、この胸の痛みをやり過ごせたんだろう。

二階堂くんの声を聴いただけで、この張り裂けそうな痛みを…どうして。

「北山…っ、きたやまっ」

何度も、名前を呼ぶ。

届かないと分かっていても。

伝えられなくても。

この気持ちに気づいてくれなくても。



逢いたい…逢いたいよ。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す