LOVE BOX -北藤-

＊ ページ13

最近、ひろの帰りが遅い。

帰ってくるけど…必ず、誰かと一緒にいる。

ひろの周りには、人がいっぱい。

電話に出てくれる時も、周りに人の声がする。

分かったと返事を返して、椅子に座る。

「遅くなる…でも、夕飯は、食べてくれる」

そう、言葉にした。

そうしないと…胸の痛みが消えないから。

不安な気持ちが消えないから。

たいぴと一緒にいるの…嫌なのかな。

スマホで…ひろの居場所を検索した。

ＧＰＳが示したのは…会社から近い居酒屋が多い商店街。

寂しくて…寂しくて。

たいぴはカーディガンを羽織って、家を出た。

ＧＰＳを頼りに居酒屋に向かう。

そして…ガラスの引き戸から中が見えて…。

息ができなかった。

ひろの…笑顔。

ずっと…見てない。

声を出して笑ってる。

いつから？

いつから…ひろの笑顔を見てない？

たいぴは…ひろの笑顔が好きなのに。

思い出すのは…。

たいぴの顔色を伺うひろ。

ひろは…どうして、帰ってきてくれるの？

どうして…たいぴのそばにいてくれるの？

死ぬよって、脅すから？

一緒にいると心臓がうるさくて。

目が合うとドキドキして。

手を繋ぐと胸がキュウって痛くなって。

抱きしめられると、心があったかくなって。

もう…しばらく、そんな気持ちを、出会った時の恋を忘れてしまっていた。

一緒に暮らしたのが間違いだったのかな。

お互いの家に行き来してれば…こんなに、ひろを束縛することはなかった？

一人の時間を作ってあげてれば…今も、ひろは笑ってくれてた？

そばにいたくて、離れたくなくて始めた同棲。

今まで…ほんと、バカなことしてた。

すぐにカッターを見せて死ぬと脅し。

『行かないで！』と我儘を言って、困らせた。

ひろの行動をＧＰＳで監視した。

いつから…こんなにもひねくれた感情になったんだろう。

自分のことばっかり。

ひろの気持ち、何も考えてない。


ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ…。


来た道を歩いて帰る。

家に帰って、ソファーに身を沈める。

たいぴには見せない笑顔。

ひろの笑顔が見たい。

でも…どうすればいい？

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