LOVE BOX -北藤-

＊ ページ12

いかに、ひろの気持ちを引き止めるか。


ひろの意識をたいぴに向けさせるか。


出会った頃の恋心は遥か彼方へ遠ざかり。


束縛という、雁字搦めの紐で尊厳と主張を固く…固く縛っていた。


出口の見えない迷路のように…。


ひろの体に巻き付けた束縛の紐を、解く術も、解こうという意識もなく。


ひろの笑顔を…ずっと見ていないことに、気づきもしなかった。


「今日、何時に帰ってくる？」


「ん〜。１９時くらいかな」


「夕飯、作って待ってるね」


仕事に送り出して、家の掃除を始める。


天気がいいから、外に干した洗濯物とシーツ。


布団を退かして、マットレスを窓際に移動して太陽の光を当てる。


家のことをしてないと、一日が長いから。


あっという間に夜になってくれないから。


汗だくになるくらい、各部屋も水回りもきれいにした。


外に出て散歩して、本屋に行って時間を潰して。


１６時過ぎに夕飯の食材を買う為にスーパーに足を運んで、重い荷物を抱えて家に帰って。


ひろの胃袋を掴むために、料理も勉強した。


覚えたレシピを順番に作ってテーブルに並べる。


〜〜〜♪♪♪♪


スマホから聞こえた着信音。


メールだ。


帰るメールかな。


手にして画面を開く。


メールＢＯＸを開くと。


『会社の奴らと急に、飲みに行くことになった。夕飯は帰って食べるから、そのままにしといてく


れ。帰る時にまた、メールする』


いつも…いつもそう。


決まってから報告してくるの。

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