海沿いの喫茶店２

５３品目:あの人のガトーショコラ ページ20

次の日... 喫茶ソルム 柘榴side

裕子「柘榴ちゃん、今日はガトーショコラがいっぱいなのねぇ」

『アハハ...少しやりすぎたというか納得のいく味が出なかったというか...』

裕子「あらあら」

ただいま店のショーケースは全部ガトーショコラで埋まってます...俺が納得いくまで作ってたのが原因です

おもしろがったおばさんたちが食べたり買ってくれたりしてくれてるから、そこは助かってるけどね

カランカラン...

『いらっしゃいませ』

斑「来たぞお！店長さん！昨日の今日だからひさしぶりという感じがしないな！」

『待ってましたよ斑くん。お好きな席へどうぞ？あのチョコの行方をお教えしますよ』

ーーーーー

『お待たせしました。ガトーショコラです』

斑「なるほどなあ、あれだけあったものをこれに使ったのか」

白い粉砂糖と添えられた生クリーム、ガトーショコラの黒しかないこのスイーツはかなりシンプルだ

だけど...あの人はそんなものばかりが得意だった

斑「ん...？そういえばガトーショコラは先代の得意なものじゃなかったか？いつの間にかなくなっていたから、店長さんは作れないのかと思ったぞお？」

『...いえ、作れます。作れるんですが...僕には「あの味」を出せる自信がなかったんです。だから外した』

店長の味を俺のもので汚したくなかったという気持ちもある...逃避行のようなものだけどなこんなの

斑くんはそんな俺を見てから、無言で一口分ガトーショコラを切り取って口に運んだ

斑「...うん、俺は店長さんのガトーショコラも好きだぞお！」

『！...ありがとうございます』

店長、俺みたいなのが...誰かを笑顔にできてるよ

これって、誇っていいよな？

ーーーーー

斑「店長さん、代金はここに置いておくぞお」

『はいただいま』

.....さて、いつもの挨拶で締めますか







『ご来店ありがとうございました』

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