6 ページ7
「何故だ」
地から這い出たような低い声。
「何故、これ以上強くならない」
私が御家に帰っていつものように私の術式を使っているところであった。
当主曰く、私の強化の能力が弱くなっていると言うのだ。
否、それは違う。
当主が強さを求めるあまり、私が強化可能な範囲以上の強さを求めてしまったのだ。
「私はこの家を、この家の歴史を守るために強くなければならないのだ!!
何故、それがわからない!?」
私は当主の苦しみを知っていた。
当主は呪力操作を得意としていたが、呪力が人並み程度だったため、幼い頃の扱いは酷いものだったと聞く。
現在当主の地位にいるのは、紛れもない努力の証。
しかし、才能とは努力を裏切るものであり、努力より勝る。
分家同士の争いは、それは大変だと従者のものから聞いた。そのため、当主は強くならねばならなかった。
そのため強さに執着する。
私は強さとは人を不幸にするものだと、身をもって知った。
何度も頭を、顔を、打たれた。
前までは少しの時間が経てば赤みが引く程度であったが、今となれば打たれた頭は腫れ、顔も青くなるようなものだった。
それには、私が当主へ十分な強さを与えられないことの他にも原因があった。
私があの日以来、一切声を出さなくなったことだ。
何度殴られたとしても一切の声もあげず、ただただ暴力を振るわれるだけなので当主も殴りやすかったのだろう。鬱憤の解消が私なのである。
私はこの呪いのような声を、酷く嫌った。
もう自分自身でも聞きたくなくて、喉を潰してやろうとも思った。臆病だからそんなことできないけど。
私は当主の苦しみを知っていたからこそ、抵抗せず、そのまま苦痛を受け入れた。
それを見兼ねた硝子や、あの五条でさえ私を心配してくれた。
しかし、私は、皆の力になりたいから特訓をしてもらっているのだと嘘の説明をした。
声のことも、聞かれた。なぜ喋らないのだと。
しかし、誰にも話さなかった。聞かれても、絶対に私が口を開けることはなかった。
御家に呼び出される回数も増え、疲弊しまくりの体に呪術師としての任務も熟す。
あれ以来、傑とは言葉を交わさずに顔を少し見る程度であったが、日に日に忙しくなる私は、もう傑の顔をしばらく見ることも無くなった。
1164人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
rix(プロフ) - 尊さん» お待たせ致しました!只今公開致しました〜!!犬小屋から出てきてくださ〜〜い!!!!お家に帰りますよー!! (2021年3月27日 9時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - rixさん» なぬ、神様の作品なら絶対読みます!犬小屋で地団駄踏んで待ってます! (2021年3月24日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - 尊さん» コメントありがとうございます!わー!そう言っていただけると嬉しいです(;;)休日に新作出すと思うので是非そちらもお読みいただけると嬉しいです笑 (2021年3月24日 17時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - めちゃくちゃ感動しました!あなたは神作の神様だったですね、一生崇拝します (2021年3月24日 14時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!よかったです!!笑自信結構なかったのでそう言っていただけると嬉しいです!! (2021年3月22日 13時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:rix @元荼毘 | 作成日時:2021年2月28日 14時