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ふわりと過ぎる、君の甘い香りを忘れない。
.
「……誰が言ったの?」
彼女が、自分の声は私の亡くした元恋人の声に似ているのかと聞いてきた。
彼女にそう吹き込んだ奴のことが許せなかった。
彼女の声は、私の亡くした元恋人の声に似ていると言われれば微かに似ていた。
しかし、喋り方も違えば口調も違う。
彼女の声は、誰のものと比較できるようなものでは無い。完全なオリジナルだ。
私が怒りを抑えていたはずなのに、どうやら声が低くなっていたようで、彼女が気を遣ったような笑顔を見せて逃げるように去っていた。
あっ…と思った頃にはもう遅い。
行き場の無くなった右手を口に当てる。
「…私らしくない」
.
あれから私は彼女に避けられていた。
話しかけるような隙も貰えず、最近見るのは彼女の後ろ姿だけ。
君に触れたい、君と話がしたい。
そう思ってはいたが、私の任務も彼女の任務も徐々に忙しくなり、顔を合わすことも少なくなった。
そうして、しばらく経った頃。
私たちはまだ一言も交わすこともなかったが、私は彼女の姿を見て驚いた。
顔に大きな痣があったのだ。
痛々しいその痣は任務中に負ったのだろうか、何があったのだろうか。
しばらく話していなかったことで自分から話しかけるのも気が進まなかったため、とても悔しいが悟に聞いた。
「ハァー?知らねえよ、聞いても教えてくんねーし。
お前が聞けば?」
私が聞けたら悟に聞くはずがないだろう。
その言葉は、私が彼女と話せていないというのを悟に晒すようなもので、更に悔しくなるので抑えた。
すると悟は続けて言葉を並べる。
「アイツ最近口も開かないし、お前なんかしたわけ?」
聞けば、彼女は何も喋らないのだと言う。
彼女は自身の声をとても気にしていたのだ。
私は頭を抱え、今すぐにでも彼女と話をするべきだと考えた。
彼女はお人好しだった。それはまあ飛び級の。
人の顔色と行動、言動をよく見ている。気遣いのよくできる女性だった。
私は気づけばそんな彼女に惹かれていた。
亡くした元恋人のことは忘れるつもりは無いが、私の悲しみは彼女によって気付けば薄れていた。
聞けば今彼女は任務中だと言う。
早く帰っておいで。早く君に伝えたいんだ。
私は今、誰でもない君を愛していると。
携帯電話が振動した。彼女からのメールだった。
久しぶりの連絡で、心が震えた。
私が恐る恐る開くと、内容は短かった。
“わかれたい”
ただそれだけ。
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rix(プロフ) - 尊さん» お待たせ致しました!只今公開致しました〜!!犬小屋から出てきてくださ〜〜い!!!!お家に帰りますよー!! (2021年3月27日 9時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - rixさん» なぬ、神様の作品なら絶対読みます!犬小屋で地団駄踏んで待ってます! (2021年3月24日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - 尊さん» コメントありがとうございます!わー!そう言っていただけると嬉しいです(;;)休日に新作出すと思うので是非そちらもお読みいただけると嬉しいです笑 (2021年3月24日 17時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - めちゃくちゃ感動しました!あなたは神作の神様だったですね、一生崇拝します (2021年3月24日 14時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!よかったです!!笑自信結構なかったのでそう言っていただけると嬉しいです!! (2021年3月22日 13時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rix @元荼毘 | 作成日時:2021年2月28日 14時