碧の厄介者 ページ2
約束通り、余計な手出しはせず妨害も特に行わず、あくまでも普通に過ごしていたのだが
『厄介だなぁ、こりゃ』
起きてから談話室に来てみれば完全に占拠されている有様
ある所では大勢がぞろぞろとみんなして部屋を教科書片手に歩き回り
ある所では魔法を上手く制御しようとお互い向き合って練習試合したりある所では筋トレをしたりと
朝のオアシス行進はどうしたんだ、とぼんやりと思っていれば頭の上にずん、と重みが加わる
「Aってぇ、朝弱いの?」
『どちらでもないです。半夜行性、といった辺りでしょうか。今はですが』
そう言えばどこぞの作者が書いていた本には人間は本来半夜行性だったのでは、というものが記されていたな
そう、確か図書館にあって....そしてすぐ隣にはそれを否定するかのように人間は昼を生きるものであるなど語っていた気がする
サムさんが大手のドリンクの隣にそのパチモンを置くみたいな、中々酷な営業妨害な事をしているのと同じような手段である
なんて考えて真上の彼をガンスルーしていれば
首元に彼の長い指が這うように降りてくる
私の喉元を人差し指でぐぐと押してくる
なるほど、非常に的確な位置
息を一瞬で、ひとつ力をこめれば殺せる角度
あれだな、経験者は語るってヤツ
尚も顔色を変えず淡々と脳内語りをする私に彼はその低く甘い声をドスの効いた声に変える
「あのさぁ、あの退学届け....本気?」
おお怖い怖い
くつくつと笑い声を控えめにあげる
『本気も何も、冗談であんな書類を持っている訳が無いだろう?』
兎にいた時以来、久々にこんな顔をしたなぁ
相手を挑発するような歪んだ笑みを浮かべればまたぐっと力をこめられる
「このままじゃ死んじゃうけどぉ....いいの?」
ふはっ、と。堪えきれなかった笑いをもらす
彼の骨ばった大きな手に自身の手をするりと重ねてさらに力をこめさせるように軽く押す
『......殺るならやれよ、なぁ。
相手が敵なら一切の躊躇も持つな。死ぬぞ』
「......チッ」
嫌そうにばっと手を剥がす彼
なら初めから締めようとしなけりゃいいのに
欠伸をしながら歩き出す彼女の白い首には痕ひとつなく、反対に彼の手は赤い手形が残っていた
はて、どちらが厄介なんだか
回答無し!と頭の中でひとり楽しげに笑っていた
何にも面白くはないというのにね
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作者名:あしな | 作成日時:2020年7月26日 17時