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50 古き夢 ページ14

【Side 太宰】

クラシカルな音楽が店内に流れる。
蒸留酒のグラスが2つバーのカウンターに置かれていた。

それを見た途端夢である事に気がつく。

それも、過去の私の夢。

黒い外套に身を包んだ私はゆっくりとグラスを傾ける。

嗚呼、この日は……織田作が亡くなった日の夜だ。
あの後、1人で考えたくて、バーに来たんだ。

「お隣、いいですか?」

綺麗な黒髪の少女が、にこりと微笑む。
物音もなく、気配もなく、幽霊の様に突然現れた彼女に、驚いた記憶がある。

「どうぞ」
「ありがとう……あら」

"誰か一緒なの?"と彼女がもうひとつのグラスを指さす。

「これは…亡き友に」

彼女の綺麗な杏色の瞳が僅かに揺れた。

「ごめんなさい、聞くべきじゃなかったわね」

緩く首を横に振り、蒸留酒を煽ると、マスターからフローズン・マルガリータを差し出される。

「私から包帯さんへ」

フローズン・マルガリータのカクテル言葉は…元気を出して

「…ありがとう。」

そう呟けば彼女は緩りと頭を振り、彼女は何処か寂しげな顔をして言った。

「とても辛いことだと思うけど、私にはこのくらいのことしか出来ないから」

ふ、と気になり彼女に問いかけたのだ。

「何故貴方はここに?」

彼女は数回瞬きをした後、質問には答えず、マスターにバイオレットフィズを頼んだ。

「貴方にお礼を言いたかっただけよ」

なんていって微笑んでいた。

そうだ、私はこの瞳の持ち主を知っている。

「君は一体…誰なんだい、少なくとも君のような女性にあった記憶はないのだけれど」

そう言えば彼女はそっと目を伏せ席を立った。

「もうお暇するわ、本当にありがとう、そして、さようなら包帯さん」

血の匂いを纏った彼女は、私に背を向けて店を出ていく。


そうだ、彼女は、あの時の彼女は…


ふ、と目が覚めると朝で、酷く懐かしい夢を見ていたような気がする。

「んん、なんだか、不思議な夢だったような…」

思い出そうにも思い出せないのが夢だ。

私は時計を見て、暫し考えた。

時計は出社の1時間前の時間を示している。
たまには時間丁度に出勤してみるか。

…今寝直せば夢が何だったかわかるかもしれない。

心の中で胃に大穴をあけているであろう国木田君に謝ってから私は布団の中に再び潜り込んだ。





※バイオレットフィズのカクテル言葉は「私を覚えていて」


だいぶ前のフラグを回収したのですが皆様わかりましたでしょうか?
また追追公開していきますのでお楽しみに!

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さにー☆彡(プロフ) - 霧島沙羅さん» そんな昔のものまで見てくださるとは……! 嬉しいです!! こちらこそ楽しんでかけました、ありがとうございました!!これからも応援しております! (2018年7月1日 23時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
霧島沙羅(プロフ) - さにー☆彡さん» もちろんです!必ず読ませていただきます!ワンピの夢も面白そうでしたし全力で読ませて頂きますね!ありがとうございます!大切に保管し、使用させて頂きますね、本当にありがとうございました! (2018年7月1日 23時) (レス) id: d11fd893a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 霧島沙羅さん» はい! もし良ければご覧になって頂けると嬉しいななんて← ありがとうございます!! こんなイラストで良ければ、ぜひ好きなようにお使い下さい!! (2018年7月1日 22時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
霧島沙羅(プロフ) - さにー☆彡さん» そうだったんですね!こちらこそありがとうございます!拝見させて頂きました!どちらも可愛くて語彙力が消えていく..!どちらも紹介させて頂いてもよろしいでしょうか?!私だけ知っているのが勿体なくて、皆様にもさにー☆彡様の素敵なイラストを見て頂きたいのです! (2018年7月1日 22時) (レス) id: d11fd893a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 霧島沙羅さん» ほんとに描いてて楽しかったです! 私も一作品文スト×REBORN書いたので、もうテンション上がってしまいまして← ありがとうございました!! (2018年6月29日 20時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霧島沙羅 | 作成日時:2018年3月4日 20時

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