100回目の猫のお風呂 ページ4
.
彼の名前は、赤司征十郎。
一般的な家よりも遥かに大きい家に住んでいる。
今知っているのは、それだけ。
「…」
俺が摘んだリンドウを花瓶に入れると、征十郎は、少しだけ嬉しそうに顔を緩めた。
……わかりづらいけれど。
「…キャットフード、なのか……?この場合。」
野良猫はキャットフードより肉の方が……とか思ってないだろうな、コイツ。
言っておくが俺は野良じゃねぇ。
「腹は減っているか?」
あ、いやむしろ眠いか?
とか頭を抱えはじめる征十郎を見る限り、猫を飼うのは初めてらしい。
少しだけ、笑えてくる。
「……A」
……いつの間に俺の名前を決めやがった。
「…風呂、入ろうか」
…子汚いとでも思ったのだろうか。
白いから汚れも目立つしな。
「ウニャン」
生憎、人間もやっていたもので、風呂は嫌いじゃないのだ。猫だけど。
俺を捕まえ、風呂へと放り投げる。
……畳10畳分以上はありそうな、大きい風呂。
「広いだろう」
俺の心情を読み取った様にいうものだから、一瞬焦る。
風呂のドアを閉め、入ってくる。何かスポーツをやっているのか、無駄な肉がほとんどない。
「……怖いか?」
風呂、と付け足す征十郎。返事をする代わりに、風呂釜へと自ら入る。
猫は日本語を喋れないので、行動で示すしかないのだ。
「……」
物珍しげに俺を見るコイツ。居心地が悪いのは確かだが、仕方があるまい。
「風呂が、怖くないのかい?」
「ニャン」
「……そうか。なら…」
と言って、彼は俺を抱きしめた。
え、なに。
「……細いな、お前は。少しでも力入れたら、折れてしまいそうだ」
本来猫なんてそういうものなのだが。
……むしろデブ猫ってほんとに一握りかいないのでは?
「…ニャン」
「……」
いやいや、と少し身体を捻る。が、一向に話す気配はない。というか、少しずつ力強まってないか?
「……あいつらに見られたら、絶対に笑われてしまうな」
パッと俺を離した。我に返ったのだろうか。
「……ありがとう」
「…ナオン」
征十郎はゆっくりと、微笑んだ。
.
68人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミッキー(プロフ) - 私は時々Rがあってもいいと思います。私はあまり見ませんが・・・ (2017年3月15日 15時) (レス) id: bd1f071c6d (このIDを非表示/違反報告)
佳仁(プロフ) - 私は甘めがいいです。Rになるとみれなくなるので。 (2017年3月9日 6時) (レス) id: 6bff3cee54 (このIDを非表示/違反報告)
キチガイな名無しの権兵衛(プロフ) - とおさんさん» ありがとうございます。更新は好きなんですが……更新は不定期になってしまうのですが、どうぞ、これからもよろしくお願いします。 (2017年2月27日 22時) (レス) id: 69acd8442d (このIDを非表示/違反報告)
とおさん - 更新がめんどくさくなってしまうかも知れませんが、息抜きにこの作品の更新を気長に待ちます。どうぞ、頑張ってください (2017年2月27日 21時) (レス) id: 1b875b1d14 (このIDを非表示/違反報告)
キチガイな名無しの権兵衛(プロフ) - makiさん» ありがとうございます。受験生なので回目の更新は不定期なのですが……これからも宜しくお願いします (2017年2月26日 7時) (レス) id: 69acd8442d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:キチガイな名無しの権兵衛 | 作成日時:2017年2月20日 22時