同志の思いを胸に【BANANA FISH】 (ページ14)

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『まだ…4分の1ってとこだな…。パスワードってだけで複雑化してやがる。ひとつ突破したらあとは楽だが、プログラム上ひとつでもミスるとデータが拝めなくなるからな…』

「へぇ…慎重なんだね。お姉さん」

『まあ…焦りこそ最大のトラップだからな』

カタン、タタタン、カタカタ、カチカチッという音が部屋の中に響く
アッシュがじっと眺めているのと、無言でキーボードとマウスを操作する私

なんの話題もなくただこんな時間が過ぎる

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『あ"ー…あとは、こいつが勝手に突破してくれる』

「なんだそれ」

『プログラミングしたウイルス。この段階まで来たら、もうこいつ1本でなんでも入れる』

「なんでも？」

『なーんでも。CIAでもFBIでもインターポールの機密情報でもなんでもな。なんなら、ISSのステーションジャックも可能だ』

「なんつー奴」

やっとこさ、半分以上のハッキングが完了しあとは待つだけだった
椅子の背もたれに体を押し付けて息を吐いた時、微かに肌を撫でる風の向きが変わったことにより、バッと振り返る

「あ…ごめんなさい。びっくりさせましたか？」

『……悪いね。後ろから近づかれるのは好きじゃないんだ。育ちが悪くてね』

お盆の上にカップを置いて持ってきた少年。名をユーシスと言うが、中国の名前じゃ驚きの名前だ
私が彼の正体を知っているのを、彼は知らないのだろう

「ジャスミン茶です。疲れが取れますよ」

『…お前、足音を立てないんだね』

「どういう意味です？」

『別に言葉通りの意味だけど？』

ユーシスはカップをデスクの上に置くと、「僕たち中国人は、幼い時から静かに動くようしつけられますから」と答えてくれた
ハイハイ、模範解答復唱ありがとうございました

『へぇ、そういうもんなんだ。ショーターはやかましいけど』

頬杖をつきながら解析とハッキングを続けているパソコンの画面を眺めると、「ログイン、できたんですか？」と聞いてきたので挿しこんでいたUSBメモリを手に取った

『プログラミングしたウイルスでハッキングした。こいつに侵入されたらパスワードも厳重なセキュリティも意味ないよ』

「すごいですね…それで、なにかわかりましたか？」

『暗号化されたドライブがあったから今は別のメモリで解読中さ。もっと早いCPUが欲しいよ…データだけ抜き取って持ってきたパソコンで解読したいぐらい』