元殺し屋はヒーローになる20 (ページ29)

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くすぐったそうにするアッシュの頭を撫でつけたあと、切り替えるように息を吐いてケースを持っている少年に振り返る
状況がいまいちわかっていないものの、今すぐにでもこの場を去りたいと言う気持ちがよく伝わってくる

「……まだなにか？」

『ケースの中身を見せて』

「見たけりゃ金払え」

『払うから見せて』

「10万ユール！」

「高すぎる！」

「なら放せ！」

私と緑谷にジリジリと詰め寄られた彼は、強引にケースを持っていこうとする
緑谷はその行動に確信を持って引っ張り、「ちょっとだけ！」と言い、「いいかげんにぃ！」とお互いに張り合い始めている

「青子の言ってた友達ってこいつ？」

『そう。かっこいいでしょ？』

「(ﾑｯ
俺だってまだかっこいいって言ってもらってない」

『はいはい』

むくれているアッシュにくすくす笑っていると、「Pi〜！」と小鳥が緑谷に突進した
またあの攻撃をされると思わずのけぞった緑谷がそのまま後ろに転がった拍子に、2人の手からケースが飛んでしまい、こっちに飛んできた

「おっ、と…」

『ナイスキャッチ』

「「あ!!!」」

アッシュがキャッチし、「中身、見るからな」とニヤッと口角を上げてケースの中身を確認し始める
これで宝石が入っていれば真っ黒の黒星になるわけだけど

緑谷と彼が我先にとこちらにもみくちゃになりながら駆け寄ってくると、「なあ、青子」とアッシュがケースの中身を見ながら声をかけてくる

『んー？』

「中身、何が入ってたの？」

『宝石だよ？宝石強盗から受け取ってたから』

「………俺の目がおかしいのかな？宝石、入ってない」

「「え？」」

私、緑谷、少年が声を揃えてアッシュを見る。アッシュは、「ほら」とケースの中身を私たちに見せてきた
私と緑谷は、顔を見合わせた後ケースを持っていた男の子に顔を向けた

2人「宝石は？」

「…………」

どこに行ったの、宝石は

焦凍side

「ご苦労様でした」

事故現場で俺が駆けつけた警官に事務手続きを済ませたところだった
すでに応急処置がされていた男は救急車で運ばれている
炎上した車を氷結で素早く消火できていなければ、男は死んでいたかもしれない

「おい、こっち来てくれ」

現場検証をしていた鑑識の人が俺たちを呼んだ

「見てくれ、これ」

「なんだこの跡…」

車のボディには小さなひし形の穴が空いている上に、爪痕まであった