元殺し屋はヒーローになる20 (ページ28)

今日:7 hit、昨日:15 hit、合計:23,856 hit

145-6 ページ28

「よその国で勝手にヒーロー活動していいわけ？」

「そ、それは…」

『………私だって、やりたくてやってるわけじゃない…』

目を逸らして答えると、彼は「なら権限もないのに、命令しないでくれるかな？」と綻びを見つけたとばかりにぐいぐいと迫ってくる

「それとも一方的に追いかけられて尋問されたって警察に通報するぅ〜？しちゃおっかなぁ〜？」

『………はぁ、別にすればいいよ…したければ』

パッと手首を振り解き、私はぐいぐい迫ってきた彼の顎を掴む

『通報したければすればいいわ。でもね、嘘をつく方がよっぽど、ダメなことなんだよ』

「…！」

「青子さん…」

『…ったく…本当なら日本でのインターン終えてたのに…めんどくさいことに巻き込まれたね』

「…あははは」

この国にはヒューマライズのテロを阻止する任務のために来ただけだ
許可が必要なら許可証なりなんなり、持ってきてやってもいいけどそれは今現在、宿泊先のホテルのスーツケースの中だ

「わかってもらえて嬉しいよ。そんなにヒーロー活動したけりゃ、自分の国でやりゃあいい。そんじゃ」

私たちが引き下がったのに満足げにウインクして歩き出そうとした彼の後ろに、「別にケースの中身を見せれば早い話だろ？」という低い声が聞こえてきた

私よりも低い身長でこれから伸び盛りなのはよくわかる
ふわふわの金色の髪の毛、キラキラと輝く翡翠の瞳、整った顔がちょこんと細い首の上に乗っかり、あの翡翠の瞳が少年を鋭く見つめている

「…え、誰」

「そこのヒーローの友達」

「あれ、あの子…」

『……………な、んで…』

自分の瞳が揺れているのがよくわかる
私に視線を向けた彼は鋭い瞳から柔らかくて温かみのある瞳を向けている
ポケットから何かを突き出しているのだろう、さっきから少年の表情が硬い

『……アッシュ』

「会いたかったよ、青子」

ハリウッドスターも驚くほどの極上の笑顔を向けた彼に、緑谷は「ひぇっ…」と呟いている
アメリカでのインターンで出会い、必ず助けると約束した彼が今目の前にいるのだ

『なん、で…ここに』

「ブランカに連れてきてもらったんだ。ディノも、社会の勉強だって言ってやったら、あっさりOKをくれたんだ」

目の前にいるアッシュを見つめて、頬に触れる
血色もいい、ちゃんとご飯を食べて寝ているのだろう

『…元気そうで安心した』

「俺も」