もう1人の正統継承者【男主】 (ページ15)

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昨日の夜は、良守のケーキ作りがおっぱじまっていたがじいちゃんの乱入のせいで設計図や試作品が全て水の泡になったらしく、あの後の良守は見るに耐えなかった

俺はというと、放課後のモチベーションアップのために良守に付き合わされてケーキ屋の前に立っている

「うわーーーー。素晴らしい…なんて美しいんだ…」

(女子か)

キラキラと輝くケーキを見つめて小さな子どものように楽しそうに見ている良守に、俺はなんとも言えない感じがしてきてならなかった

「なんやキミ、甘いもん好きかいな？」

「うん、大好き！」

「ああ、この店ええよね
細工が凝ってあるし、何より味が…」

ｼｭﾊﾞｯﾁｨｰﾝ!!

「ひょっこり俺の背後に、現れてんじゃねえよ…」

(修羅か？)

「なんやキミ！いきなりチョップて、どんな教育受けてんねや!!」

(そういう教育だ)

じいちゃんにいつもなにかとチョップを受けている良守だからこそ、見て学び実践しているのだ
俺には止める力もない、いや、止める気がない

「ここ行けっつったろ！」

「あぁ、それ行ったでフツーに」

「ちゃんと話聞いてきたのかよ！」

「それがな…まぁあのオバハン、ええ人やねんけど…
なんかこう、ボケ同士の会話？みたいなってどーも収拾つかへんねんな」

「………」

『…おい、オバハンってマザーさんとこか？』

「うん」

そりゃこの人間霊とあのマザーさんじゃ、無理だろ…誰か普通の常識人連れていかない限り、問題は解決しねえし…どうやらこの人間霊は烏森に来ていたのを良守が対よく追い返したらしい

「あのなぁ…あの人は自分の霊感を悪用せず、本当に好意で迷える霊たちの相談に乗ってる奇特な人なんだぞ！
あ、あんたもしかしてまだ自分の状況…」

「ああ、それは任せて。ちゃーんと理解したで、自分が死んだこと」

にっこりと笑って言うもんだから、俺はほんの少しなんて言っていいのかわからなかった
というよりも、自分が死んだことを理解して笑っている人間霊なんて、稀に見るからだ

「まーな、確かに…言われてみればモノに触れんし、ガラスにも姿映らんしね
でな、ちょっと面白いと思うたんよ。キミや」

「俺？」