もう1人の正統継承者【男主】 (ページ16)

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「さっきのチョップもそうやけど、なんでキミボクに触れんの？
あの相談所のオバハンかて触れんかったで」

「いや、まぁ…あの人は専門が違うし…俺はそう言う系統の術者っていうか…」

このままじゃ埒があかないので、帰りながら説明することになり、俺たちが「結界師」ということを説明した

「結界師？」

「あの土地を毎晩見回って、寄ってくる妖げなものを退治するのが仕事なんだ」

「あら、意外に武闘派？」

「まあ、あんたくらいの状態なら俺たちには関係ないけどさ、あそこにいると変化する場合があるから」

「ほんで、変化すると何ができるようになるん？」

「バカ、いくなよ絶対!! そしたら俺は、あんたを退治しなきゃいけなくなる」

…良守は、こんなにも優しく忠告している
それが妖でも、人間でも、人間霊でもだ
時にその優しさが甘く誘惑に満ちていることもあれば、足枷になり足を引っ張ってしまうものにも変わってしまう

脆くも強いこの優しい気持ちは、俺にはたまに…理解できない

「じゃ、迷わず成仏してくれ」

「ええーー!? 待ってや！ボク、このままでは死んでも死にきれんねん!!」

「だからもう死んでんだよ!!」

「だってな、よう思い出したら今際の際の言葉、「キャベツ…」やってん！そりゃないやろが！」

「知るか！」

「せめて、「イチゴ！」とかやったら…な!?」

「変わんねーだろ、それ…」

「違う！全然違う!! だってボク…パティシエやってん」

あぁ…どうりでその格好か
納得がいった

「パティシエ…？」

「うん。お菓子とかデザート作る係やね」

「なに!? そいつはスゲエじゃねーか!!」

「正確にいうと修行中いうか、うちの店小さいからなんでもやらされてたけどな
でもええよね、甘いもんって。なんか人を幸せにするよね」

「わかる！俺、甘いものには優しさが満ちてる気がする！」

「そうそう、あれは愛やね。しかも分け隔てのない愛！」

(なんか始まった…)

目の前で始まるトークに俺はついていけず、ずっと甘いもの甘いものと言われて、胸焼けが起こってきたので、タバコを口に咥えてライターで火をつけた

「ボクの夢ね、自分の作ったお菓子で人を幸せにすることやってん
他の人の顔が綻ぶとな、ボクの胸のあたりもぽわぁってなるねん
でも…それももうできへんのかなぁ…」

「それは…」

「コラ！」

あ、時音