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『あんなに高く飛べるなんて羨ましいよ』
「澪緒もやってみたら案外できんじゃね?」
『できないよ…』
棒だって絶対重いし、あんなの持って走るなんて到底無理だ
ガコンと落ちてきた飲み物を取ったショーターは、「見ていくのか?」と聞いてきたけど、私は教室に向かうと答えた
下駄箱で靴を履き替えると、カタンと音が聞こえた
誰か来たのかなと思って周りを見回すと、転校初日に見たあの人がいた
金髪にグリーンアイ
とても綺麗な人はほんの少しだけ陸上部の練習を見たあと、階段を登っていった
『綺麗な人…』
ぽつりと呟いた言葉は静かな廊下に響いた
「澪緒…って、アッシュいなかったのか?」
『え?』
「アイツ今日は来るって言ってたし、朝練見に行くって言ってたんだけどなぁ…」
『……』
ショーターや奥村くん、シンくんが言うアッシュってどんな人なんだろ
カバンを机の上に置いて教科書やノートを出しているとブブッとスマホが揺れた
お兄ちゃん澪緒、ごめん!
お兄ちゃん正門まで来て!
澪緒なにかあったの?
お兄ちゃん澪緒のお箸持ってきてた!
そう言われてカバンの中にある保冷バッグの中を確認すると、私のお箸が入っていなかった代わりに、お兄ちゃんのお箸が入っていた
お箸だけ取り出して、『すぐに行く』とメッセージを送る
「どうした?」
『ちょっと届け物』
パタパタと廊下を駆け出し、正門に向かうと部活の服を着たままのお兄ちゃんがいた
「ごめんねぇ、朝から」
『いいよ。はい』
「ありがとう!」
『朝練は?大丈夫?』
「大丈夫。今日はいつもよりも早く終わったし、ここからすぐだから間に合うよ」
お箸を保冷バッグの中に詰め込んだお兄ちゃんは、「じゃ、頑張ってね」と手を振って走っていく
自分の箸を受け取って教室に戻ると……
「あ、来たぜアッシュ」
「?」
ショーターの前の席に座って話をしていたあの綺麗な人がいた
ショーターが私を見て「アイツだよ」と言えば、彼は綺麗な金髪を揺らしてグリーンアイをこちらに向けてきた
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年3月23日 22時