人魚姫なんて大嫌い【ジョジョ5部】 (ページ2)

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少女とギャング② ページ2

「ゆっくり食べろ､」

リストランテに連れていかれた少女は出されたスパゲティを慣れないフォークで必死に食べていた

「君､そんな薄着で一体どこから来たんだ？」

少女はフォークを置き､言葉を詰まらせた

「名前を聞いていなかったな､名乗りなさい」

少女はまた､言葉を詰まらせる

「名前がないのか？」

少女はゆっくりと頷いた

「そうか､困ったな。それは予想外だ」

男は帽子を置き､困ったように頭を巡らせた

「なら名付け親になってやる。俺の好きな言葉から取ろう

君の名前はAだ。いいな？A」

「……A」

少女､いやAが掠れた声でポツリと呟く

「その調子だA､教えてくれ。お前のことを」

Aは､生まれて初めて未来を見た

「A､お前は美しい。その美貌はいつか必ず役に立つ」

男は孤児院の前で､平均的な体型をしたAにそう言った

「6歳の誕生日プレゼントだ」

男はそう言うと1冊の絵本を少女に渡した

「人魚姫だ…！これ好きなの､ありがとう！」
1年前の掠れた声とは似ても似つかない透き通った綺麗な声でAは言った

「Aちゃん､これから沢山の友達を作ろうね」
愛想の良さそうなおばさんがAの頬を撫でた

「じゃあな」

「待って､！」

男が帽子を被り背を向けるとAは強く抱きついた

「行かないで､」

「もう二度と俺と関わるな」

小さく涙を零すAを､男は冷たく突き放した

だが､それは愛だった

男はギャングだった。

Aがこっちの世界に来ないよう自分の素性も､名前すら教えずに見ず知らずの少女を1年間見守った

両親から学ぶはずの愛(・)という当たり前のことをAは裏世界のギャングから知ったのだ

それはまた､1人の少年も同じだった

「A､こっちに来いよ！」
「A､A！ここ分からなくてさ､」

Aを囲む数々の少年達。その中をAはレッドカーペットを歩くように通る

「また後でね､」

艶のある髪は風でふわりとなびき､そんな姿は一体何人の男の心を射止めただろう。

「ジョルノどけよ！」
Aの周りにいた1人が少年を強く押した

「邪魔だな､国に帰れよ日本人」
「なんて事するの！やめてよ！」

Aは倒れた少年の元へ駆け寄り､手を差し伸べた

「A､違うんだ､そいつは…」
少年は半泣きで震え､必死に弁解する

「貴方って最低ね。大嫌いよ」