いとこの話は知っている

２-１ おかしなアーヤ side.翼 ページ7

今日は、アーヤがおかしい。

っていうか、別人に等しい。

佐田真理子に嫌味を言われたときは、さっそう

と言い返し、苦手な数学の授業中、少し

発展させられている問題も、スラスラと解いて

いた。

それに、いまも だ。

今日は 学校から秀明まで 直行で行く日。

人目を気にするアーヤは、いつもだったら、

途中で会っても、距離を置いて歩く。

少なくとも、俺が積極的に話しかけない限り、

アーヤは近寄ってこないのが常。

でも いま、秀明に向けて歩いてる俺の横に、

アーヤがいる。

しかも、先に学校を出ていた俺を、追いかけて

きたと言うから驚き。

特に用がないらしいのに。

「あのね、翼。

翼はカッコいいじゃない？」

この一言だけでむせ返る俺って、どうかしてる

気がする。

「だから、モデルとか アイドルとか

やってみたらいいと思うの。

絶対似合うと思うけどなあ。」

のんびり話すアーヤを、ちょっと異常な目で

見てしまう。

俺、そういうのに興味がないって、KZの

活動を通して、アーヤは気付いてるって

思ってたんだけど。

今日、明らかに、雰囲気 違うでしょ・・・。

それは、髪型のせいかもしれない。

いつもは髪をさげているアーヤ。

今日は、ポニーテールだった。

女子は髪型変えたら雰囲気も変わるっていう

けど、本当かもな。

雰囲気どころか、中身まで まるで別人

だから。

「それで翼は、将来何になりたいの？」

「・・・は？」

「だから、将来の夢は、なに？」

この発言・・・。

俺は、ピタリと足を止めた。

アーヤも、パッとその場で歩みを止める。

「どうしたの、たす。」

「君、誰。」

アーヤが言い終わらないうちに、言葉を

被せるようにして、低い声を出した。

「誰って・・・立花彩だよ。」

キョトンとした表情を見せたアーヤ。

いつもの顔と、そっくりだ。

でも 彼女は、立花彩じゃない。

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