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私が呼ぶ声が聞こえたらしい彼は何かを察して少し足早に向かってきてくれた
彼が近くに来た瞬間腕を絡め、正直自分でもドン引きするような甘ったれた声を出す
『私の大好きな彼氏です〜』
そう告げると目の前のナンパ師達は顔を引き攣らせ、“あ…”なんて情けない声を出す
当たり前か。
だって私の大好きな彼氏(大嘘)はそんじょそこらのイケメンじゃない
国宝級の美形・奈良坂透だ。
加えて程よく鍛えられたこの身体。
誰がどう見ても文句なんて言えまい。
奈「俺の彼女に何か御用ですか?声を掛けたくなるのは分かりますが、生憎俺も彼女を愛しているので他を当たって下さい」
なんて冗談か本音かギリギリ危うい台詞を平気でつらつらと述べていく透は私がしがみついた方と逆側の腕で私を抱きとめる
……こやつ、なんかテンション高いぞ
奈「……ほら、早く行こ」
そのまま腕を引かれ、足早に退散すると特におってくる気配もない。
恐らく彼の美貌に打ち負かされて諦めてくれたんだろう。
_____ところで、だ
『どこ行くんですか』
奈「隊長に交際報告しに行く」
『はぁ!?』
なぜ、どうして、そんな思考回路になった?
奈「先に俺を“大好きな彼氏”と言ったのはAだぞ?」
『それはその場しのぎって言うか、』
嘘と言うか、冗談と言うか、
適切な言葉が思い浮かばずに唸る私に対して、余裕の表情で“ほぅ”と含ませる透
奈「俺の気持ちを知っていてそれか?」
『う“』
奈「安心しろ。生涯幸せにしてやる」
『生涯!?規模デカってかそろそろ腕離、___せないし、なんかボスがこっちに来てる!!!!!』
わーきゃー騒いでも誰も助けてくれないし、こちらに歩いてくる隊長はどことなく不機嫌そう
水で濡れたその姿からゆっくり顔を背けると怒気を孕んだ“おい”と言う声が鼓膜に響く
秀「悪いが借りるぞ」
奈「大人しく貸すと思うか?」
『ワタシモノジャナイ』
「「お前は黙っていろ」」
…正直どちらにもついて行きたくない。
秀次はおこだし、透に至っては行動の予測がつかない。
出来れば今すぐに女の子たちの元へ行きたいが、腕を掴まれてそれどころでは無い。
彼女達も呆れてこちらを見るばかりだし、
米屋・佐伯・里見・隠岐は気づいてないし、
新は、まぁ……薄着の女子を助けるのは無理
出水・片桐はこの場に投入したくない。
どうし__
秀 「行くぞ」
あぁ、終わった。
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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時