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それからはありふれた入学日だった
式典に集合写真にHRを行って解散みたいな
結 「それで____」
『そうなんだ…ってごめんね。今日予定あって』
結 「そっか残念。また明日」
『うん、またね』
そして何故か全て終える頃には結束と彼女が仲良くなっていて、教室を出る姿を見送る結束の瞳は少し物悲しそうだった。
「打ち解けるのが早いな」
結 「…………だってしょうがないじゃん」
そして不貞腐れる幼馴染みはこう言った。
結「……元々気になってたんだから」
「……は?」
結「だから!あの子広報やってるからずっと可愛いなって思って追ってたの!!悪い?」
「い、いや」
だいぶ理解の追いつかない発言に素っ頓狂な声を出すと更に不機嫌そうに顔を歪めて訴える
それはまぁ、つまり
“推し”と言ったところか
結 「奇跡的に隣の席になれて頑張って声かけたら仲良くなっちゃった、」
「……良かったな」
長年一緒にいるがこんなにもテンションが高い結束を見ることは滅多にない
余程嬉しかったんだろう
帰路に着く時も“あんな事を話した”とか“こう言うのが好み”だとか熱弁し、結局“私があの子の隣を牛耳ってやる”なんて暴論にまで行き着いていた。
____そのせいなのか
その日以降、結束は頻繁に2人の会話に俺を巻き込もうとしてきた。
最初は“この人が幼馴染みで〜”、“ボーダーでも一緒に活動してて〜”なんて軽い紹介から始まり、会話する場所を俺の席の近くに移してきたり
もちろんそれが嫌な訳では無かったが、明らかに結束が必死だったことに僅かながら違和感を覚えた。
けれどそれも最初だけ。
俺の想像以上に彼女は朗らかで、明るくて、気さくで
気づいた時には結束の仲介無しで世間話が出来るようになっていた。
何より彼女との間に流れる空気はゆったりと穏やかで優しく、昔から何かとまとめ役を押し付けられてきた俺にとっては唯一着飾らないで居られる時間だった。
『__片桐って地頭良いよね』
「はは、…そうなのか?」
『会話の切り返しが上手いなぁって。いつも話してて楽しいよ』
「それは俺もだな」
夕暮れ時、結束の委員会終わりを待ちながら2人きりの教室でそんな話をしたっけ。
飾らない言葉。飾らない気持ち。繕わない表情。
純粋で素直な心の表現に心が温まった気がした
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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時