桜の導き ページ21
新しい制服に腕を通したのは桜がほとんど散ってしまった時期
満開を過ぎた桜はお世辞にも美しいとは言えなかったけれど賑やかな周囲の話し声が聞くと自分が新入生であることを実感させてくれた
結 「……まさか同じクラス?」
「俺の視力と眼鏡の度数が狂ってなかったらな」
玄関ホールに掲示されたクラス分けの表を見上げながら“……はぁ”と納得しきれない声を漏らすのは結束夏凛
「嫌だった?」
結 「…別にそういうのじゃないけど、」
とは言え気持ちはわからなくない。
俺と結束は俗に言う幼馴染みで家が近くて昔からの仲
ボーダーに所属している以上選択できる高校はほぼ2択だし六頴館に合格したと聞いた時は“まぁそうなるよな”程度の感覚でいたが、まさかクラスまで同じになるとは思っていなかった。
これに加えてボーダーでも行動を共にすることが多いためほぼ四六時中一緒という訳だ
結 「ま。最初から知らない人だらけよりは良いかもね」
「そうかもな」
切っても切れない縁
と言うか最早切れない事を悟った縁に肩を竦めつつ教室へ向かうと既に半数弱の生徒が席に着いていた
早過ぎず遅すぎず。そんな時間だったんだろう。
____そう思った時だった。
結「げ」
結束の苦虫を噛み潰したような声が聞こえたのは
結 「……なんでこうなるかな」
「どうした?」
最悪と言わんばかりのトーンに目の前の座席表を覗き込むと“ほら、”と座席が指さされる
結「私たち横列が同じ席なのよ」
「……ほんとだ」
間に4人いるが、確かに同じ高さに片桐隆明と結束夏凛の名前が連なっている
ここまで来ると何か別の思惑を疑いたいが
まぁ絶対に違うだろう
それに今回は単に横列が一緒だっただけで席は隣でも前後でもなんでもない。
ただの偶然。考え過ぎと言ったところか
結 「…ねぇ、あの子」
「ん?……あぁボーダーの」
考えるのを止めて席につこうと一歩踏み出したタイミングで不意に結束に呼び止められる
結束の視線の先には整えられた黒髪と雪のように白い肌をした女子生徒が暇を持て余すように読書をしていた
今でも鮮明に覚えている。
彼女が本を閉じ、机上のスマホを触った刹那に浮かべた花のような優しい微笑み
「……確か」
___福地A
けどまだこの時は知らなかった。
俺と彼女が紡ぐ未来の事を____
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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時