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行ってきます。

そんな挨拶を執事にして家を出た。



いつも通り5時に起きて朝食をとり、着替えて髪を整える
なんてルーティンのような朝を過ごしたが昨日の帰宅後は大変だった




何がって、言わずもがな執事である




別に怒られたりした訳じゃないけれど

“あぁもうGPSは嫌がられるからお付になりませんでしたのに私に何も告げずに昼帰りなど…!あぁいえ別に柊の名がどうのなどと今生この上なくどうでもいい事ではなく、貴女様が私に何も(ry”

……と訳の分からぬことを嘆き始めてしまったのだ



おかげで再燃したGPS装着案を鎮火するのに4時間かかってしまった




普段は冷静沈着、頭脳明晰、完璧主義の三拍子を兼ね揃えた彼だが根は心配性×過保護で成り立っている

そのせいで下手に動揺させると謎のメンヘラ気質を匂わせてくるのが悩みの種




『(優しくて優秀な方なんだけど……)』



時々手段を選ばないのが玉に瑕



『はぁ、、』



朝食や紅茶は完璧そのものだったけれど朝も謎にそわそわしていて落ち着かせるに苦労したせいか、4月の少し冷たい風が気持ちいい



大きなため息をついて上を見るとまだ白みがかった空から僅かに太陽の光が漏れている



『凛月、』


低めな体温
大好きな声
優しい瞳

それら全てで乱れた情緒を落ち着かせたくて
小さな声で彼の名を呼ぶ


『…会いたい』


なんて押し殺していた感情が溢れ出して思わず苦笑する



堪え性も無くなるなんて愚かなこと。




……あぁそう言えば
彼から“音楽室で待ってて”なんて連絡が来ていたっけ。

何やら準備があるとか無いとか



『…さすがに待たせすぎちゃったものね』

「ほんとにネ」

『えぇほんと、に……ぇ』




私も彼を待とう。そんな事を決した瞬間に背後から声が聞こえた気がした。

どうか気のせいであって欲しいと祈ったけれど残念ながらこれは曲げようのない現実らしい



____強く抱きしめられた身体がその証明だ




『な、つめ』

「やっと見つけタ」



少し風変わりな語尾のイントネーションに頬を擽る赤い髪


彼はそう。
幸せを紡ぐ魔法使い





『なんで、』

「それはこっちの台詞だヨ。やっと戻ってきてくれたと思ったら僕には何も言わないでサ!?僕に会うのが8番目ってどういうことなノ!?」

『あぁ、の』

「大体最初に再会すべきは僕でショ!?なのにあいつが1番とか信じ___」

「……ねぇ」


夏目の文句がヒートアップした時、冷ややかな声が降り注いだ

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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月3日 23時

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