女王の朔望月 (ページ5)

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＿＿＿12時
柔らかい日差しに涼しい風を感じてゆっくりと目を開ける

あれほど騒がしかった校内は少し静かになり、睡眠に快適な空間となっていた

もう一眠りしようか、とも考えたが小腹が空いた。

グッと伸びをして幼なじみへ呼びかける

｢ねぇまーくん、お腹空いたから何か買ってきて｣

｢ええ〜、俺今から生徒会の仕事あるから時間ないんだよなぁ……｣

｢なにそれ、｣

俺より生徒会の仕事なんかを優先するのか、薄情な

｢まーくんわがまま〜｣

｢んだよそれ…ぁ〜、っとわり。今まじ時間ないから嵐、後は頼んだぞ｣

“任せてちょうだい♡”なんて陽気な返事を確認すると光の速さで荷物を整理し、必要なものだけ持って足早に教室を去る幼なじみ

彼の言動のせいで快適空間で上がった気分は一気に不快の境地まで下がってしまった

｢(……もういい。寝よう)｣

不貞腐れてもう一度突っ伏そうと身体を前のめりに倒すと、“んも〜！”なんて不平が聞こえてくる

｢せっっかくアタシとお話しできるのに寝るなんて勿体ないわよ？？｣

｢……ナッちゃんと話すより寝たいんだけど｣

正直、この金髪とはいつでも会話できるし

今日はギャンギャン吠えるわんちゃんも居なければ、そもそも廊下を出歩く人数も少ない。こんな寝るのに最適な時間はそう簡単に訪れるものじゃない

｢コーギーいないから快適〜｣

｢まぁた酷い言い方ね…。今日は“龍王戦”でしたっけ？随分と息巻いていたわ｣

｢……どうせ潰されるでしょ｣

今時非公式のB1なんて生徒会の取り締まりを受けて終わり

無理無理。

そう言いかけた所でふと思いつく

｢(…あぁ。そっか)｣

まーくんが忙しそうにしていたのはこれか。

大方“生徒会が忙しい”と偽情報を流し、油断した所を一気に取り締まる算段なんだろう

生徒会も、大多数生徒も単純だ

｢ふぅ、

＿＿…っ｣

この学園の息苦しさにから解放されるように、息を吸い込もうとした時

胸の辺りがつっかえた

……あぁ、いつもこう

少しでも“息苦しい”と感じた瞬間に記憶が鮮明に蘇り、心を抉りつける。

溢れんばかりの焦燥感。失い、泣きじゃくった絶望。

＿＿＿＿思い出したくもない。あの日の事を

まるで海で溺れているかのよう

呼吸だけが苦しくなり、月光が差し込む水面へ必死に手を伸ばしても身体は黒く暗い方へと沈む一方

……そして徐々に
月の光さえ霞んでいく