女王の朔望月 (ページ36)

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幸せな夢から醒めた現実は絶望に等しいものだった

｢……つ、りぃぃつ！｣

｢…ん、ま〜くん、？｣

ゆさゆさと揺り起こされ、目を開いて真っ先に目に入ったのは幼なじみの姿

せっかくの目覚めなのにAじゃないなんて

……A？

｢Aは…？｣

いない。
眠りに落ちる前まであった左側の温もりがない

彼女が逃げないように、逃げても自分が気づくように体重を預け、手も繋いでいたはずなのに

それに＿＿＿

｢……なんでま〜くんがいるの？｣

時計を見ると普段の登校時間より圧倒的に早い。
本来であればこの時間は家を出る前のはず

｢なんでって…お前が連絡入れたんだろ〜｣

｢連絡？｣

｢“音楽室に居るから迎えに来て〜”って。｣

｢……ねぇまーくん、その連絡来たのいつ？｣

｢え、えーと20分前ぐらい？……あ〜でも様子が気になっていつもより早く家出た、ってちょ、凛月！？｣

まーくんの言葉を聞いて音楽室を飛び出す。
日光のせいで身体は重いし気持ち悪いけどそれどころじゃない

20分。
普通ならもうとっくに学院を出てる。

……けど。
もしAが夢ノ咲に本当の決別をしに来たのならまだ学院にいるはず。

癪に障るけどAが大切にしていたのは俺だけじゃない。
少なくとも後5人いる

なら＿＿＿＿

｢……兄者｣

もう1周回って駆け落ちしててもいい
今ここでAを留めてくれているならなんだって

｢(Aどこ、)｣

2-B？講堂？軽音部の部室？

＿＿＿それじゃダメ。あと一歩の所で絶対にかわされる

……なら門か

2択。表か裏。
生徒に紛れて正門から出るか、人目を避けて裏門から出る

間違えたら致命傷。だからと言って悩んでいる時間はない

｢(落ち着け)｣

まーくんを呼んだのは恐らくA
彼女なら俺のスマホのロック如き簡単に開けられる

それにAはまーくんと面識があるし関係性も知ってる

俺から逃げたのにまーくんと鉢合わせる可能性のある判断をするわけない

徐々に動かなくなる頭と身体を必死に動かして目的地へ急ぐ

｢……い、た｣

鳩が飛び交った後、呆然と立ち尽くす彼女

早く止めなきゃ、

｢A！！！！｣

慌てて対去ろうとする彼女に抱きつき、今度こそ離さないように腕の力を強くしたはずだったのに

大事な所で身体の力が抜けていく

体質への憎しみと彼女を失う絶望を感じた時、俺は意識を手放した