勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

99話 魔法使いのお仕事 ページ9

見張り達を倒した私達は、紗羅の魔法で片割れの居場所を探す。

片割れの位置が近くなるほど、水色の光が明るくなる仕組みだ。

道筋は示してくれないので階段を上り下りするのは大変だが、明るさの度合が分かりやすいので

案外順調に進んでいる。

それで"アレ"がなければとても嬉しいのだが。



「無駄に魔物が多いですね。僕、みんなを守らないと……！」

「珍しいわねアレン、いつもは怖がりなのに。ふふっ」

「A達を守るためにも、怖じ気づいている訳にはいきません！」

「ふーん。前に出すぎて死んだりしないでよ、貴方はまだ見習い魔導師なんだから」

「み、見習いですか………」



そう、廃墟にいる魔物に遭遇しやすいのはあしからず。筋肉質なものからもう生き物の原型すら

保っていないものまで、種類は様々だが、面倒なことに変わりはない。

殺しをした事がない私と一矢にとっては、見ることだって耐え難いものだ。

なのに、二人は蟻を潰していくように魔物を殺す。少なくとも、人や犬の形を保っている生き物

を刃物で深く斬れば、当たり前のように真っ赤な血が流れるのに。

なんだか不安になってきたから、「魔法使いって、こんな事もやらないといけないの？」って、

何故か返り血がついていない綺麗な紗羅に聞いてみた。



「そういうのは専門によって分かれてるのよね〜。日之影家は代々魔物の退治や世界の環境を調

べる仕事とかを仕事としてたから、こんな物騒な仕事が多いのかもしれないけど」

「ふーん」



地元の人々の依頼を受けて仕事をするのが普通らしいから、殺しだけはＮＧってやり方も出来る

っちゃ出来るらしい。それを聞いて少し安心したかもしれない。

そして、世羅の攻撃型という特殊な体質が、日之影家にとっていかに優位なのかが分かった気が

する。魔物をバシバシやっつけられるのは良い。

いや、ちょっと待って。あの家系で生まれつきの攻撃型なんて都合が良すぎる。あの驚異的な生

命力(Ｇ以上)も、怪我を数週間で治してしまえそうな回復力も、おかしい。おかしすぎる。

私と同い年くらいの少年に限って、あんな細い身体(ロックさん以上の細さ)で？

失礼な話だけど、一番上のお姉さん(百合亜さん)なんか、驚異的なレベルで体力が皆無だし。

明らかに人間離れしている。

彼って何者なんだろう。



「いつか分かることよ〜」

「ど、読心術……」

100話 見習い魔導師の本気→←98話 脱出するために

ラッキーカラー

あずきいろ

勿忘草の丘 ＊作成話 ＆・つぶやき

・中二病って難しいけどかっこいいんです

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す