217話 水面に映る影 ページ37
石レンガの欠片が転げ落ち、下を向いた私の足元に当たる。
アイビーの背後から、恐る恐る音のした方を覗いてみた。
倒れこんでぐったりしている、灰色で長髪の王城兵の上に、ちゃっかり着地しているサミダレ。
よかった、王城兵に顔を覚えられずに済んだみたいだ。
どうやら彼、あの城壁から飛び降りた際に素手で王城兵を気絶させておいたらしく、王城兵の上
に着地するつもりは毛頭なかったのだという。
彼の広い背に負われた自己主張の強い薙刀は、今回ばかりは出番無しのようだ。
「まぁ念のため、記憶を消す魔法をかけますねー」
「それにしても、灰色の髪の兵なんてアイツぐらいしかいないはずだろう? まさか……」
「パリ、ズン……」
「ちょっとシネラ、変なこと言わないでちょうだい。あの灰ワカメなんかが自分で見回りをする
わけないじゃないの。一応王の側近なんだし……」
「まぁまぁ、こんな所で口論しなくても。それでカエイ、さっきの魔符ってどういうこと?」
「あぁ、あれは馬を召喚することができるんです。この後我々は、王都の大通りや枯れ木の森、
雪山の脇の平らな道を越えていきます。徒歩だと時間がかかりすぎますし、本物の馬は夜通し走
り続ける事ができませんので」
えーっと、今年のGWに叔母さんやアレンと一緒に3人で乗馬をしたから、一列に並んで歩くっ
ていう経験はあるんだけど…… 走ったことは1度もないよ?
しかもカエイったら、夜通し走り続けるとか言い出した。幻の馬だから食事もしないし疲れない
とか言うけれど、それ以前に私の体力がもたない。
そんな私の心配をよそに、警備がガバガバな城壁を見渡すカエイ達……
王城から完全に出るためには、隅にある水路を通らなければいけないらしい。
舟は既に用意されていたようで、さっきの王城兵から頂戴したランプの光に照らされた水面が、
私達の姿をゆらりと動かす。
その中で、シネラの姿だけが酷く黒ずんでいるように見えた。
「この水路を出られれば、あとは馬に乗って街へ向かうのみ。A王女は二度とここへは戻れ
なくなるかもしれません。御家族ともそうそう会うことはないでしょう」
「……分かってる。例えサイネリア王家を敵に回すことになっても、私は家に帰るよ」
きょうだいを残していくのは悲しいけど、私はもとの場所に戻らないと。
「………後は、頼んだぞ」
小さくなっていく私達の背を眺めて、明るい灰色髪の王城兵はつぶやいた。
ラッキーカラー
あずきいろ
4. までのキャラが扱える楽器をご紹介!《共通点も考え中》
シネラ:???…… まさかのオリジナル楽器です。ネタバレになりかねないので???状態。
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作者名:さやや | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8211/
作成日時:2017年8月12日 22時