貴女に惚れました。【文スト】【男主】

貴女に惚れた6 ページ9

「俺は今年で二十八だ。何か不満があるか？礼儀知らず」


「いや…不満は無いけれど…」


不満は無いが云いたい事はある様だな。大方、俺の年齢が想像していたより上だった、とかだろう。


「私と同じくらいだと思っていたよ…」


ほらな。俺の年齢を知った奴は皆んな同じ事を云う。"もう少し若いかと思っていた"等、聞き飽きた言葉だ。


「妾より歳上なンだねェ」


「…歳上はお嫌いですか？」


もしここで嫌いだと云われたら俺は灰になれる自信がある。だが与謝野女医は歳上だから嫌いと云う事は無いそうだ。一先ず安心だな。


「随分と童顔なんですね」


「言葉遣いは改めたか。ただの礼儀知らずでは無い様だな」


「その礼儀知らずって云うの止めて貰えません？」


名前も名乗らない礼儀知らずにはこれで十分だと云うと、漸く名乗る気になったらしい。


「私は太宰治と云います。貴方は？」


「…………鳳だ」


ええー名字だけなんてケチー！等と抜かす此奴は放っておこう。こんな胡散臭い奴に下の名前まで教えられる訳が無い。…俺の礼儀には少しばかり反するが致し方無い。


ピリリリ、と携帯端末の音が医務室に響いた。俺のものだ。液晶を見れば『帰還セヨ』の文字。今日はここまでか。


「与謝野女医、今日はここで失礼します」


「ああ、仕事だろ？頑張ンな」


…その言葉がどれだけ励みになる事か。

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