貴女に惚れた7 ページ10
「はあ………」
職務に明け暮れ、疲れた躯を引きずる様に夜の街を歩いている。……少し張り切り過ぎたか。
頑張れ、と云われたから頑張った。
与謝野女医の言葉は俺の機動力だな。
……それにしても、しつこい奴だ。さっきからこそこそと。煩わしい。
「出て来たら如何だ。こそこそと探られるのは趣味じゃない」
俺が声を掛ければ、昼間探偵社で出逢った胡散臭い男、太宰が物陰から音も無く現れた。
「気配は消していた心算だったんですけどねえ」
「何の用だ」
ヘラヘラと笑っていた太宰は、俺の言葉に目を細めた。相手を探る、蛇の様な目だ。俺はその目を正面から捉え続ける。
「…貴方はいったい何者なんですか」
先程とは全く違う、冷気漂う声色でそう聞かれた。矢張りこの男には裏がある。
「知って如何する?」
太宰は俺の言葉を無視したまま、話を続ける。
「貴方の事を調べても何も出て来なかった。
「俺はしがない公務員だ。経歴が白くて当たり前だろう」
「白過ぎるんですよ。逆に鬼魅が悪くなる程に。いくら一般人でも小さな罪は誰でも犯すものです。貴方にはそれが一切無い」
「………貴様、いったい何処まで潜り込んだ?」
俺の言葉に、太宰は何も応えなかった。
ただ無表情に、氷の様な瞳で俺を見つめているだけだった。
92人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Asterisk@あーちゃん(プロフ) - 『鳳』って、与謝野晶子女史の旧姓ですよね!! (2019年5月14日 22時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)
Asterisk@あーちゃん(プロフ) - コメント失礼致します。凄いです、こんな小説を探していました…!主人公が鉄幹さんなんて、凄く素敵です!! (2019年5月14日 22時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)
藍斗(プロフ) - 続編希望です! (2018年7月30日 10時) (レス) id: 2f591e73cb (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 1 (2018年7月27日 17時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - 1 (2018年7月27日 13時) (レス) id: 6ed63001fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ペンギン屋 | 作成日時:2018年7月9日 23時