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任務開始 ページ1

「A君、今すぐ私の執務室に来てくれるかね?」

ポートマフィアビルの内線電話から告げられたその言葉。このポートマフィアに居る限り、首領の言葉は絶対だ。了承の返事をしてから、私は執筆していた報告書を中断し、服装を整え最上階へと向かった。


コンコンコン。静かな最上階にノックの音が響く。

『首領。広津Aです。』

返事がない。が、これは最早恒例行事というものだ。コンコンコン。再度ノックをしてから、私は執務室の扉を開け放った。

『首領、広津です。入りますよ。』

扉を開けると案の定、首領はエリス嬢の着替えに勤しんでいた。ここまでが、所謂テンプレというやつだ。


エリス嬢の着替えが終わり、首領室のシャッターが降りたところで、ようやく本題に入る。

「さて、仕事の話をしよう。先日、月が爆発して7割ほど蒸発したニュースがあったのを覚えているかね?そこで、政府から君に暗殺依頼が来ている。標的はその月を爆破した犯人。成功報酬は百億円。なんでもその怪物は、来年の3月に地球をも爆破するらしい。そしてそれまでの1年間、椚ヶ丘中学校3年E組で担任教師をしていると。E組の生徒たちはその怪物を来年3月までに暗殺するよう防衛省から依頼を受けた。だが並の中学生に暗殺などできるはずもない。そこで君だ。受けてくれるかね?」

………………

『ポートマフィアとしては政府の機嫌を損ねたくない、仮に放置したとしても、来年の三月にはこのヨコハマも地球ごと消滅する、と。』

「話が早くて助かるよ。」

『分かりました。その依頼、お受けしましょう。』

「期待しているよ。」

首領が笑みを浮かべる。失敗するな、という無言のメッセージを受け取った。


首領の執務室を後にし、自分の執務室へと戻る。執務室の扉を閉めた瞬間、私の口からため息が漏れた。……本当は、ツッコミたいところはたくさんある。月を爆破した犯人が教師をしている、その生徒が担任を暗殺しようとしている、何故地球を爆破する必要がある?そもそも政府がポートマフィアに依頼をするという時点で少々おかしいのだ。
だが、仕事は仕事だ。割り切らねばならない。政府からの信用を保つためにも、愛するこのヨコハマを守るためにも。首領から渡された資料に目を通し、私は再びため息をつくのだった。

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作者名:ぎんなん | 作成日時:2024年2月22日 17時

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