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｢──え、｣
マスターから写真立てを受け取ると、私は言葉を失った。
写真立ての中に収まっているのは、複数人の食事風景を写した写真だった。レンズを向けられていることに気づいていないのか、皆自然体でリラックスした様子だ。
｢ああ、盗撮って訳じゃあないよ。かしこまった顔より、いつもの賑やかな様子が撮りたくてね……なるべくカメラは気にしないでくれとお願いしたんだ｣
マスターの弁解する声がやけに遠く聞こえた。
写真に写っている人物は5人。
──身振り手振りを交え、楽しげに喋っている帽子を被った男の人。
──帽子の男の人の隣で相づちを打つ長髪の男の人。
｢ミスタさん……と、さっき出会ったあの人｣
｢なんだお客さん、ミスタさんとは知り合いなのかい？隣の人はアバッキオさんだよ。何やら訳ありらしかったが、ブチャラティさんとはお互い信頼しあっているようだった。根は真面目で優しい人だったんだろうね｣
──難しい顔で計算式の書かれたノートとにらめっこするオレンジ色のバンダナの少年。
──その隣で、バンダナの少年をじっと見つめるイチゴのピアスをした少年。
｢フーゴさんとあの子だ……｣
｢ナランチャさん─黒髪の子─と喧嘩してる時のフーゴさんは年相応の男の子って感じで、見ていて微笑ましかったな。彼がボロボロのナランチャさんを連れてきた時は驚いたよ｣
──そして、テーブルの中心には白いスーツを着た黒髪の男性。4人の部下に向ける眼差しは優しく穏やかで。
彼──ブチャラティさんだけが、私のまったく知らない人だった。
｢ブチャラティさんに最後に会ったのは、新入りだと言って金髪の少年を連れてきた時だったか……もう皆さんが揃うことはないのだと思うと、私は時々酷く悲しくなるよ。ブチャラティさんだけじゃあない、アバッキオさんもナランチャさんも、もう……｣
マスターは目頭を抑え、再び奥へと戻っていってしまった。
『元々ハロウィンは、日本でいうお盆のような行事なんです』
『皆が仮装してお祭り騒ぎしている中に、あの世から大切な人に会いに来た人が紛れてるか も』
『死んだ人間が甦るなんて奇跡、そうあることじゃあない。だが、彼らにまた会えたら、会いに来てくれたら──』
──出かける前にした兄さんとの会話。あの二人との奇妙な邂逅。そして、この写真とマスターの話。
頭の中で、点と点が繋がっていく。
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あさはか金魚(プロフ) - 面白い！こんな面白い作品を作っていただきありがとうございます！！ (2020年8月2日 10時) (
レス) id: bae01be7f3 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - tamaさん» コメントありがとうございます！最初にコメントくれた方ですよね？ずっと読んでくれていたこと、感謝します。これからも頑張ります！ (2019年11月14日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - お久しぶりです！31話からもうわくわくでした！頑張って！ (2019年11月12日 20時) (レス) id: 85d88e1cc2 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 美琴さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてなによりです！ハロウィン後半のテーマは『あの人達と一日限りの邂逅』です。もう11月ですがまだハロウィン回は続くので楽しんでいただけると嬉しいです！ (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 幽銀さん» コメントありがとうございます！作者も読んでくださる読者の皆さんがいっぱいしゅき…… (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伯 | 作成日時：2019年9月3日 4時
