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10月31日。今日は待ちに待ったハロウィンフェスティバル当日。ベッドから体を起こし寝ぼけ眼をこすっていると、部屋に兄さんがやってきた。
｢おはようA｣
私に微笑みかける兄さんは相変わらず、格好良くて綺麗で完璧だ。ただ、その装いはいつもと違っていた。
赤いブラウスに黒いマント。口を開くと尖った牙が覗く。
｢その仮装……吸血鬼ですか?｣
｢正解。可愛いお嬢さん、君の血を頂きにきました｣
｢もう兄さんったら。吸血鬼がこんな朝にやってきたら灰になっちゃうじゃあないですか｣
二人で顔を見合わせて笑う。でも、兄さんがあんまり格好良いものだから、内心ドキドキしていた。バレていないと良いんだけれど。
｢ふふ、冗談ですよ。それよりせっかくのハロウィンだ、君もおめかししなくっちゃあ｣
そう言って兄さんは紙袋を私に手渡した。
｢お願いされていたものです。着替えている間、ぼくは外に出ているので｣
それだけ言うと、麗しのヴァンパイアはマントを翻し退出する。部屋には私が残される。
袋の中には仮装用の衣装が丁寧に折り畳まれ入っていた。
お願い、聞いてくれたんだ。
｢……兄さん、ありがとう｣
胸が温かくなって、紙袋をぎゅっと抱き締めた。
.
｢……ベネ｣
それが長いこと黙り込んでいた兄さんの第一声だった。
｢ええと、おかしくないかしら？｣
｢まさか！とても似合っていますし、最高に可愛いです！ふふ、やはりぼくの目に狂いはなかった……｣
誉めちぎられて照れつつも安堵する。せっかく用意してくれたのに、似合わなかったら恥ずかしいもの。
兄さんが用意してくれた私の仮装は、所謂『赤ずきんちゃん』だった。ふんわり広がるパニエスカートに、真っ赤な頭巾。大きなバスケットがスイーツでいっぱいになることを想像すると、胸が弾む。
｢君、本当に可愛い……悪い狼に狙われそうで心配ですよ。皆に警備をより入念にするよう伝えないとな｣
｢ああ、兄さん達が今回のお祭りの警備をしてくださるんでしたね｣
｢ええ、任せてください。君を狙う輩は腹をかっさばいて石でも詰めてネアポリスの海に沈めてやりますから｣
兄さんは爽やかな笑顔で物騒極まりないことを言い放った。それは赤ずきんじゃあなくて、狼と七匹の子やぎじゃあないかしら……
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あさはか金魚(プロフ) - 面白い！こんな面白い作品を作っていただきありがとうございます！！ (2020年8月2日 10時) (
レス) id: bae01be7f3 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - tamaさん» コメントありがとうございます！最初にコメントくれた方ですよね？ずっと読んでくれていたこと、感謝します。これからも頑張ります！ (2019年11月14日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - お久しぶりです！31話からもうわくわくでした！頑張って！ (2019年11月12日 20時) (レス) id: 85d88e1cc2 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 美琴さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてなによりです！ハロウィン後半のテーマは『あの人達と一日限りの邂逅』です。もう11月ですがまだハロウィン回は続くので楽しんでいただけると嬉しいです！ (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 幽銀さん» コメントありがとうございます！作者も読んでくださる読者の皆さんがいっぱいしゅき…… (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伯 | 作成日時：2019年9月3日 4時
