最終曲 おかえり ページ46
「終わりましたね」
「そうですね」
「終わったな」
コンサートが終わり、楽団の全員で打ち上げをした後に、私、小野寺ちゃん、菱川さん、プラスまふまふさんの、合計四人で二次会をした。
「皆、どこいっちゃったんでしょうね」
「本当に、演奏の時は居たんだけど…」
「…大丈夫か?」
菱川さんが私を覗き込む。
「何がでしょう?」
「会いたがってただろ、前の同居人の人達にさ」
「会いたくはありますけど、いいんですよ。
演奏を聴いてくれたなら、それだけで」
言って、ぐいとワインを煽る。
正直に言うと、寂しい。
コンサート終了後、まふまふさんは小野寺ちゃんに会いに来た。
私も、彼らに会えるのではないかと思って会場周辺を探した。
けれど、四人の誰の姿も見かけることはなかった。
ついでに言うと、連絡も取れない。
…こういう日に限って、やたら冷たいじゃないですか、皆。
前日まで、メールやらなんやら大量に送ってきたくせに。
そんなこんなで日付けが変わらないうちに帰ることになり、三人と別れた後、覚束ない足取りでこれからの我が家に辿り着く。
因みにこれまたシェアハウスだ。
コンサート終わった直後から新居だなんて、休む暇も無いな、と溜息をついた。
正直気が重い。
外国の方に囲まれて、上手くやっていけるだろうか。
いや、やっていかなくてはならないのだ。
前を向け、頑張れ、私。
そう自分に言い聞かせ、インターホンを押した。
するとドタドタドタ、という音がした後、バンッ!と豪快に扉が開けられる。
そこにいたのは。
「Aー!会いたかったでー!」
「お疲れ様ー!酒飲んで酔い潰れて菱川君にお持ち帰りされないか心配やったわー!」
坂田さんに、志麻さんである。
後ろからうらたさんとセンラさんも顔を出した。
「皆、どうして…」
「どうしてってここ、俺らの家だから」
「…え?」
「また五人で住めるー言うことですよ、Aちゃん」
なるほど。そういうことか。
連絡がぱったり途絶えたことだとか、色々な疑問がすっきり晴れていく。
サプライズが成功して四人はキャッキャと喜びあっている。
目から溢れるこれは、安堵か、喜びか、そのどちらもか。
彼らは揃ってこちらを見ると、いつものように言った。
それに私もいつものように返す。
私達のシェアハウス生活は、まだまだ続くようです。
「「「「おかえり」」」」
「ただいま」
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Shooto_Keeki(プロフ) - たまたま見つけて読んでました。もう本当に最高でした、最後の展開で泣きそうになっちゃいましたよw (2019年9月22日 19時) (レス) id: 7c93d27e64 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 時雨さん» 最後までお読みいただき、ありがとうございました!涙だなんて、そんなに感動していただけてとても嬉しいです…! (2019年1月31日 9時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても凄くて感動しました…!!(語彙力低下)最後涙が…;;素敵な作品、読ませていただきありがとうございました…!!!!!! (2019年1月31日 0時) (レス) id: 274b7ae121 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 夢愛-ゆあ-さん» 長編になっていますが、最後までお読みいただきありがとうございます!泣いていただける程感動してもらうことができ、私もとても幸せに思います。わざわざコメントまでいていただき、ありがとうございました! (2019年1月7日 22時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
夢愛-ゆあ-(プロフ) - とても面白くて一気読みしちゃいました…!最後の方は感動で涙が止まりませんでした…(涙)実は小説を読んで泣いたのって初めてで自分でびっくりしてます(((それほど素敵な小説に出会えて幸せです!今から番外編も読ませていただきます!長文失礼しました!! (2019年1月7日 19時) (レス) id: b3b95c5e04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽飛 | 作成日時:2018年11月14日 19時