77曲目 家族 ページ27
その子供のような、でも頼れるリーダーの顔をする彼のその言葉に。
自然と、涙が流れていた。
ここで、初めて気付く。
あ、私。誰かにこれを言いたかったんだ。
そう思ったら、もうこの口は止まらない。
「…私、わからないんです。
志麻さんも、坂田さんも、センラさんも。
私を好きだと言ってくれます。
私も、彼らが好きです。
皆、好きなんです。
恋愛の好きじゃないって、ずっと思ってました。けど、これは…っ!」
うん、と優しく相槌を打ちながら、優しく私の言葉を待ってくれるうらたさん。
彼に、息を深く吸って、言う。
「私、最低な女なんでしょうか…?」
少なくとも面倒な女ではある。
こんな質問をする程度には。
「…はぁ」
彼は再度溜息をつく。
…それは、安堵の溜息に聞こえた。
彼の、私を包むような優しい緑色の瞳が真っ直ぐに私を捉える。
「そんなことか。
好きで当たり前だろ。家族なんだから」
「か、ぞく…」
「同じ家住んでんだから、家族みたいなもんで、家族なら愛おしいってのも普通の感情だろ。
…仮にそうでない好きだったとしても。
悪いことなんてないだろ。好きなものは好きなんだから。その時はゆっくり一人を決めればいいんだよ」
寧ろその立場を利用してあいつらを弄んでやれ、と意地の悪い顔をして笑う彼の笑顔は、イルミネーションに負けず劣らず輝いて見えて。
私にとっては、イルミネーションよりも綺麗だと思った。
家族。
そう思ってもらえていたことに。
そう思っていいことにとても安心して、嬉しくて。
頬が緩む。
「ありがとうございます。
…なんだか、ちっぽけなことで悩んでましたね。私も、ばっかみたい」
先程のうらたさんのセリフを真似て言う。
「…うらたさんのことも、好きですよ」
「俺もだよ」
「え?でもさっきは好きじゃないって」
「違う、あれは、
て、」
「て?」
「照れ、隠し…」
顔を赤くして、手の甲を口元に押し付け言ううらたさん。
…ああ、愛おしい。
堂々と思えるのは、家族だから。
家族として、彼らに寄り添って、彼らの幸せそうな顔をずっと見ていたい。
「因みにうらたさんが私のことを好きなのくらい知ってますよ」
「なっ…!」
「家族ですから」
覚えた単語は、無性に使いたくなるものだ。
べ、と舌を出すと、うらたさんは更に耳まで顔を赤くしほんとばっかじゃねぇの!?と小学生みたいにそっぽを向いた。
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Shooto_Keeki(プロフ) - たまたま見つけて読んでました。もう本当に最高でした、最後の展開で泣きそうになっちゃいましたよw (2019年9月22日 19時) (レス) id: 7c93d27e64 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 時雨さん» 最後までお読みいただき、ありがとうございました!涙だなんて、そんなに感動していただけてとても嬉しいです…! (2019年1月31日 9時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても凄くて感動しました…!!(語彙力低下)最後涙が…;;素敵な作品、読ませていただきありがとうございました…!!!!!! (2019年1月31日 0時) (レス) id: 274b7ae121 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 夢愛-ゆあ-さん» 長編になっていますが、最後までお読みいただきありがとうございます!泣いていただける程感動してもらうことができ、私もとても幸せに思います。わざわざコメントまでいていただき、ありがとうございました! (2019年1月7日 22時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
夢愛-ゆあ-(プロフ) - とても面白くて一気読みしちゃいました…!最後の方は感動で涙が止まりませんでした…(涙)実は小説を読んで泣いたのって初めてで自分でびっくりしてます(((それほど素敵な小説に出会えて幸せです!今から番外編も読ませていただきます!長文失礼しました!! (2019年1月7日 19時) (レス) id: b3b95c5e04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽飛 | 作成日時:2018年11月14日 19時