旧友 ページ5
携帯の振動音で目を覚ます。
睡眠を妨害されたのが腹立たしくて、薄目を開けて音の元を探るが、いつも近くにあるはずのサイドテーブルにも届かず手は空を切るばかりで、そういえば自分はソファーで寝たのだったと思い出した。
無理やり体を起こせば、昨日の宅飲みの残骸と尾形が床に転がっていた。
尾形はクッションを枕代わりにして、渡してもいない毛布に包まり寝息をたてている。
もう一度、振動音がした。
しかし、よく見ると光っているのは自分の携帯ではなく、尾形のスマホらしかった。画面を見ると、だいたい五分おき位に着信がきている。送り主は皆「花沢勇作」のようだ。
思わず「こわ」と声が漏れてしまった。
「尾形、起きろ」
「…………ん、あﾞ？」
「愛しの弟君からLINEが来てる」
「は……弟、あー、勇作か……」
そう言うとまたウトウトと目を閉じ始める。
従って、毛布をひっぺがしクッションを取り上げた。尾形は分かりやすく眉間に皺を寄せ舌打ちをした。そこに彼のスマホを押し付ければ、更に機嫌は悪くなる。
「……なんだコイツ、ストーカーか何かか？」
「私もそう思った」
勇作からのメッセージは尾形を「兄様」として慕ってはいるものの、どこでそんな情報を手に入れたのだ、と言う位のかなりプライベートな内容も時々含まれていた。正しく「ヤンデレの弟に死ぬほど愛されて眠れない」である。
「たしか、会うのは10時だったな」
時計は今8時35分を指している。尾形も今から家に戻れば十分間に合う時間だろう。
「帰る。……飯美味かった」
「惣菜なんだから味なんて変わらないだろ。あ、それと弟君によろしく伝えといてくれ」
「わかった」
こちらにも目をやらず、いそいそと尾形は出ていった。それに適当に手を振って「また来いよ」なんて定型句を送る。そんなこと言わなくてもこの山猫はふらっと現れるのだが。
パタン、と玄関の扉の閉まる音がした途端、部屋の中は静寂に包まれる。それが落ち着かなくなり、おもむろに立ち上がって少し遅めの朝食にすることにした。しかし、冷蔵庫の中を見ても、野菜ジュースが半分と生ハムが数切れ残っているだけで、とても朝食になりそうな食材はなさそうだった。
ひとつ、ため息をついて、仕方なく朝は我慢することにする。普段もあまり食べないのでそんなに問題はない、でも流石に冷蔵庫に何も無いのは不味いので、すぐに買い出しの準備を始めた。
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−(プロフ) - わ〜！！！！そう言って貰えると励みになります！！！！！ありがとうございます！！！！！ (2021年10月29日 20時) (
レス) id: abbb997ccd (このIDを非表示/違反報告)
桜忌(プロフ) - めっちゃ好きです。これからも続き楽しみに待ってます！！ (2021年10月29日 1時) (レス) @page8 id: 542ce05019 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：− | 作成日時：2021年10月17日 22時
