御一人様 ページ1
アイツの真っ黒な瞳を覗く度、その深さに目眩がしそうになる。
そこには迷子の子供のような寂寥と恐怖が滲んでいて、何の考えもなく苦しくなって抱きしめてしまうのだ。大丈夫だ、と伝えられずにはいられなくなるのだ。ただ、それ以外に伝える手段を持っていなかったのかもしれない。その証拠に、自分の口からは何の気の利いた台詞も思い浮かばなかった。
だから最期、怯えたような表情をしたアイツを見た時、薄れゆく意識の中でぼんやりと後悔の念に駆られたのを覚えている。
私がいなくなったら、誰が傍にいてやれる、誰がアイツを抱きしめてやれる？
「……や、くそく」
お前を一人遺していくことを、許してくれなんて言えない。代わりに約束をしよう、尾形。
もしも次があったら、絶対に会いに行く。お前の空白が埋まり、幸せだって恥ずかしげもなく言えるように。
神の悪戯か祝福か、私は記憶を持ったまま転生した。現代には戦争もなく、穏やかに仕事に励み本やゲームといった文化に触れることができる、まさに百年前の理想郷といえる景色が広がっていた。
今の私もこうやって、手に職を付けてごく普通のOLとして生きているのだ。それがどんなに有難いことか。
「よぉ、A」
それでも、この男は相変わらずな訳で。
会社の事務担当の子と話していたら、背中をぽんと叩かれた。そのまま、ちょっかいをかけるみたいに肩に腕を回され連れていかれそうになるので、するりと抜け出す。
「今忙しい。後にしろ」
「ははぁっ、女王サマはよくおモテになるようで。……じゃあ今夜、な」
「ん……」
自分の耳元から離れてひらひらと手を振って立ち去る尾形を目の端で見送り、事務の子に目線を移した。彼女は何故か顔を林檎のように真っ赤に頬を染めていた。
「どうかしたのかな、お嬢さん」
「あっ、あの、尾形さんとはどういう……」
「うん？ただの同期だが」
「あの距離でっ！？」
「きょり？」
「あ、いえ、なんでもないです……失礼しました」
急に声を大きくしたと思ったら次はしおらしくなり、私はそんな態度にまたも首を傾げながら書類を手渡した。
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−(プロフ) - わ〜！！！！そう言って貰えると励みになります！！！！！ありがとうございます！！！！！ (2021年10月29日 20時) (
レス) id: abbb997ccd (このIDを非表示/違反報告)
桜忌(プロフ) - めっちゃ好きです。これからも続き楽しみに待ってます！！ (2021年10月29日 1時) (レス) @page8 id: 542ce05019 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：− | 作成日時：2021年10月17日 22時
