第6話 ページ7
「あ、武道くん。」
「Aちゃん!塾の帰り?」
「そうだよ。この前風邪で休んでたから、自習の時間を1時間増やしたんだけど、時計見てなくて結構過ぎちゃったんだよね……」
「確かに学校休んでたよな。もう風邪は平気か?」
「うん!じゃあまたね。」
「オイオイ、こんな暗いのに一人で帰る気か?最近不良もいっぱいいんだから、女の子一人じゃ危ねぇから。送ってくよ。」
「武道くんも不良だけどね。」
「うっ、そ、そうだけどさぁ……!」
「ふふっ、冗談だよ。行こうか。」
武道くんってさ、みんなに優しいよね。
こうやって危ないからって送って行ってくれる優しさ。
困っていた私を助けてくれた優しさ。
危ない目に遭いそうになったヒナちゃんを助けてくれた優しさ。
多分、私やヒナちゃんだけじゃないと思う。武道くんを好きな女の子って。もっといっぱいいるよ。それを君が知らないだけ。
なぜ自分はモテないのかと聞いてきたことがあったけど、わかっている女の子はきっといるよ。君が誰よりかっこいいってこと。
「武道くん、もしかして怪我してる……?」
暗くて顔がよく見えないから、目を凝らさないと分かりにくい。
「え、ああ……この前、ちょっとな。」
「だめだよ、喧嘩は。危ないんだから。それに私も……」
「?」
「ヒナちゃんも心配するよ。可愛い彼女なんだから、あんまり心配させちゃだめだよ?」
「ああ、そうだよな……!俺、橘もAちゃんも心配させねえように気をつけるわ！」
「うん!そうしよ!」
きっと一番心配しているのは、ヒナちゃんであって、私じゃない。悔しいけれど、私はヒナちゃんには勝てない。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年10月20日 21時
