第15話 ページ17
「武道くん……?」
「あ……!ごめん、ぼーっとしてた。」
ヒナちゃんの死を知ってから、武道くんは上の空だった。
大好きだった人がいなくなった世界に立っていると、胸にぽっかりと穴が空いたような感じがする。
分かるよ。私も、その感覚を知っているから。
「……ヒナちゃんに、会いたい?」
「……?何言ってんだよ、橘は死んだんだから、もう会えねえよ……。会いたくてもさ。」
「そう……」
君が嘘をついたとしても、私は分かってる。
いつも君の心にあの子がいたこと。
君が忘れてしまった思い出も、
たくさんしてきた後悔も、
全部ヒナちゃんだったんだね。
***
「久しぶり、おばあちゃん。」
Aはある日、年老いて寝たきりの女性の家を訪ねた。
彼女はAの祖母ではないが、Aを孫娘のように思っていてくれる人であり、Aは彼女を祖母のように慕っていた。
「今日は、どうしたの?」
「頼みがあって来たの。もう一度だけ、私を過去に連れて行って。過去の私に会いに行きたいの。それと……私のこの能力を、譲る方法を教えてほしいの。」
Aが警察官になったのは、昔に助けてくれた警察官のお姉さんに憧れたからだった。そのお姉さんと知り合うようになったとき、お姉さんの母であるこの人に出会った。
お姉さんはAが幼い時に抗争に巻き込まれ亡くなった。未来を変えたいと願ったAにおばあさんは不思議な力を授けた。過去に戻れる能力と、未来を視る事の出来る能力。
Aはおばあちゃんをトリガーに、お姉さんを幼い頃に救っていた。
おばあちゃんは、Aに与えたタイムリープ能力とは別に、過去の自分に会える能力を持っていたのだ。
「どうしても、やりたいことなの……?」
「そう。そして私の近所で変な男が彷徨いてる。私の能力を狙っている人間がいる。何時までもこの能力を私は保持できない…」
「A……貴方に未来視をあげたから、もう殆ど見えないけれど……私には貴方の未来が見えてしまったわ。人によってはこれは悲しい人生だと、思う人がいるかもしれない……」
「おばあちゃん……」
「私は貴方に悲しい目にあってほしくない。それと、能力を渡す方法はね、」
彼女はAの耳元で囁いた。
「!」
「貴方に出来るかどうか…」
「私の人生は私のものよ。運命なんてひっくり返してやるんだから。いつか死ぬならその日まで好き勝手しても誰も怒らない。彼に伝えたら、また来るね。」
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年10月20日 21時
