第六十四話 ページ18
「……A?」
今日も仕事に行こうとしたら、Aがスーツの裾を掴んで引き留める。
「……今日も帰り遅いの?」
「ああ。多分遅くなる。」
「最近忙しいのは分かってる。だけど……ホントは寂しい。もっと竜ちゃんと一緒にいたい。遅い夜にひっそりと帰ってくると、いつか竜ちゃんが朝になっても帰ってこない気がして、怖くなる。」
「!」
そうだよな。
辛いよな、寂しいよな。
お前は何度も孤独な夜をたった一人で乗り越えてきたんだもんな。
俺はまた、お前に恋をした。
そんなふうに俺を大事にしてくれる女は、お前だけだもん。
「大丈夫、俺はお前を置いていなくなったりしねぇよ。お前みたいないい女、他にいねぇもん。お前こそ、俺からいなくなんなよ。」
優しくAを抱き寄せて、ちゅっと音を立てて額にキスをした。
「約束だからね。破ったらご飯作ってあげない。」
「ははっ、そりゃ困るワ。じゃあ、行ってくる。」
「竜ちゃん!」
「ん?」
「大好き。いってらっしゃい。」
「!」
竜胆に、いってらっしゃいのキスをした。
そして、竜胆は仕事へ向かう。
ったく、お前はどんだけ俺を惚れさせたら気が済むんだよ。
毎日毎日お前に恋してる俺の身にもなってほしいよ。
まあ、それも悪くはないけどさ。
Aは俺の仕事を知らねぇ。
知らなくていい。
この汚ねぇ仕事をAには見せない。
Aは幸せに、自分の夢の為に頑張ってるんだ。
お前の幸せは俺がぜってぇ守ってやるから。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年10月16日 19時