偽りの箱庭【灰谷竜胆】2 (ページ1)

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第四十七話ページ1

一年後の冬。

「A、俺ら出掛けてくるわ。」

「喧嘩……?」

「まァそんなとこ。」

何だかいつもと同じように振る舞ってる二人に違和感があって、気になった。

けど、熱が出て満足に動けないから、止めることもできない。

「蘭ちゃんが帰ってきたらうんと甘やかしてやろうな。」

「うん……。」

「兄貴、行くよ。」

「あァ。じゃあまた後でな。」

額にキスをして、蘭は部屋を出ていった。

***
「お前は良かったの?Aに何も言わなくて。」

「……俺は、別に……」

「今ならまだ間に合うぜ。死ぬつもりはねぇけど、無傷とも言い切れねぇんだしさ。ほら、待っててやるから早く行ってこい。」

「……悪りぃ。」

***
「A…?」

声をかけても返事はなかった。寝てるのか…?

「入るぞ。」

すぅ、すぅ……とAは寝息を立てていた。

寝ていて安心したような、少し寂しいような。

お前にはもう、これで終わりにするから。

もう二度と触れたりしねぇから…。

最後に、一度だけ。

Aの頬を包んでキスを落とした。

寝ている今なら、きっと許される。

「好きだ。」

ずっと……18年間お前に伝えられなかった言葉を今言うよ。

「……この渡せなかったプレゼント。お前にあげようってずっと思ってた。けど……俺には勇気がなかった。渡すだけなら、罪じゃねぇよな。」

俺はAの左手の薬指に指輪をはめた。

「早く元気になれよ、A……。行ってくる。」

そっと優しく、扉を閉ざして。