偽りの箱庭【灰谷竜胆】2 (ページ12)

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第五十八話ページ12

「……?」

ここ、どこ……?

「おはよ、A。」

「蘭ちゃん……?私……うっ!」

起き上がろうとすると、足がズキンと痛んで、動けなかった。

「無理すんな、今は寝てろよ。」

「うん……ねぇ、私……」

「竜胆から聞いた。足怪我させられたって。橋から突き落とされたところを助けたのは竜胆だ。」

「竜ちゃん……」

竜ちゃんは、俯いたまま。

「…ごめんな、A。俺がお前をもっと早くから追いかけていれば、あんな危険な目には……」

「でも、私は生きてる。竜ちゃんが駆けつけてくれたから。やっぱり竜ちゃんは私のヒーローだね。」

「おいおい蘭ちゃんは〜?」

「もちろん蘭ちゃんもね。……母さんがね、言ってたの。私、灰谷の子じゃないって……」

「……ああ。」

「ふたりとも知ってたの……?」

「ああ。お前が赤ん坊だったとき、急に家に来たからな。その事情は父さんから聞いてた。」

「そう……ねぇ、教えて。私のこと。どうして私は灰谷の子になったの……?」

「お前は、知りたい?お前の母さんのこと、生まれてから灰谷家に来るまでのこと。落ち着くまで待ってもいいけど、今知りたいのか?」

「うん、知りたい……」

「じゃあ、話してやるよ。お前のこと。お前がどこで生まれたか、そしてお前の母さん─…鹿乃花さんが、どんな人だったか。」