日向正宗と双子の物語。弐

初めての喧嘩。 ページ17

九鬼は出陣、日向は内番の日にそれは起こった。

九鬼side
「ふー…粗方片付いたかな？蛍丸君、隊の皆の所に戻ろっか。｣

「そうだね。それにしても九鬼は強すぎ。大太刀の俺が霞んじゃう。｣

「あはは、ごめんごめん。でも私なんてまだまだだよ。私より強い刀なんて沢山いるからね、頑張らないと！｣

「うん。俺も頑張る！｣

二人で楽しく話ながら大阪城を歩いていたその時。

はっ…！

「蛍丸君！｣

「え？｣

真っ暗闇から飛び込んで来た敵を急いで斬った。

だがその時…

日向side

「九鬼さんたち、そろそろ帰ってくる頃ですね。｣

「そうだね、物吉君。｣

すると皆が広間に集まりだした。

「もう帰ってきたのかな？｣

九鬼は…と思ったら九鬼らしき人物がいた。

「九鬼…？パーカーを深く被ってどうしたの？｣

「それはね…ほら！｣

九鬼は勢いよくパーカーを取った。

九鬼の髪は短くなっていた。僕と全く同じ髪型に切り揃えられていた。

「蛍丸君を庇った時にね、切られちゃった！お兄ちゃんとお揃いだよ！｣

「きゃー！九鬼ちゃん可愛い！｣

「えへへ、ありがとうございます、主様。｣

すると…

「九鬼。｣

九鬼に日向の冷静な声がかけられた。

「なに？｣

「僕、前に言ったよね？無茶しないでって。どうして無茶をするの？｣

「え、でも今回は蛍丸君が危なかったから…｣

「僕はその事に対して怒ってるんじゃないよ、九鬼。寧ろ大切な仲間を助ける事は当たり前の事だと思うから。僕が怒ってるのは、傷ついて帰ってきたのにそれを何故喜んでいるのか、笑っているのかって言いたいの。｣

すると九鬼は両方の拳をギュッと握った。

「なによ！！私はお揃いの髪を見せたかっただけじゃない！！｣

「なっ…九鬼は自分を尊重する気持ちが足りなさすぎるんだ！｣

「尊重してるってば！髪だって手入れ部屋で直してもらうつもりだったんだもん！日向の分からず屋！もう知らないもん！ふーんだふーんだあふーんだ！｣

「九鬼さん、行っちゃいましたね…｣

「対応が子供だったな。｣

「兼さんも人の事言えないよ！｣

「何だと！？｣

「君のことだからこそ…こんなに必死なんじゃないか。｣

そう呟いて、日向は部屋に戻っていった。

その背中は、誰が見ても悲しく、小さく、儚げだった。

二人が出逢ったのは何千年も前のこと。しかしこの日。二人が初めて、家族として、自分の考えを本気でぶつけ合う、喧嘩をした日だったのでした。

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