第二十七訓 ページ28
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川のほとりに腰掛けるA。
長いまつ毛が頬に陰を落とし、その奥の瞳のなんと儚げな事か。
黙って座っていると本当に綺麗な子だな……
そんな事を思いながら、後ろからそっと声をかけた山崎にAは振り向いてぎこちなく笑う。
「…… 隣、いいかな?」
「うん」
しばらく沈黙が続き、痺れを切らした山崎が口を開く。
「Aちゃんはどうして真選組に?」
「……人を、探してるの」
「それって……」
Aの入隊が決まってすぐの頃、土方の指示により彼女の身辺調査が行われた。
大きな道場の一人娘だったこと。
攘夷浪士に家族を殺されたこと。
そして、真選組に入隊した目的。
監察として、彼女に関する一通りの情報は知っている。
「……見つけたら、どうするの?」
答えのわかりきったその問いに、Aは笑顔で口を開く。
「─── 殺すよ」
私はここへ何をしに来たのか.......
まるで自分を戒めるかのようなあの夢。
忘れた事なんか一度だってない。
爪が食い込む程に握られた拳を見て、山崎はAを放ってはおけなかった。
「Aちゃん、実は───────」
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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時