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ぷしゅう、気の抜けた音が鳴って、開いていた反対側の扉がゆっくり閉まる。
再び動き出した電車の中、目の前の黒尾さんが気まずそうに視線を逸らした。
「……顔、真っ赤ですよ」
「あー、そういうこと言っちゃうんだ。そっとしておいてくれません??」
イタズラ心でそっと指摘すると、黒尾さんは拗ねたような声で返してくる。
子どもみたいなその声に、思わず私は笑ってしまった。かわいい。
「ただでさえ近いっつーのに、Aが匂いなんか嗅いでくるから。緊張するに決まってんじゃん」
「っだから、嗅いでないです!こんなに近かったら嗅がなくても匂いわかりますよ!」
だけどその可愛い声で私のことを変態みたいに言ってくるから、慌てて否定させてもらう。
ほんとに別に、嗅ごうと思って嗅いだわけじゃないもん。
鼻先に触れそうなほど近い場所に、黒尾さんの体があったのが悪い。
……というか何なら、部活直後のくせにこんなに爽やかな香りを纏った黒尾さんが1番悪いしズルい。
つい数十分前まで汗だくでボールを追いかけていたんだから、もう少し汗臭くいてくれたっていいのに。
「てか匂いといえば気になってたんだけどさ、」
私が心の中で理不尽な逆ギレをかましているうちに、黒尾さんはすっかり自身の照れを収めたらしい。
いつも通りの
急に詰められた距離に私が思わず固まると、すん、頭のすぐ上で空気を吸う音が聞こえてきた。
「やっぱり、Aっていつもいい匂いする。シャンプー?」
「っな、」
──嗅がれた。
慌てて顔を上げると、既に身を起こした、大真面目な表情の黒尾さんと視線が絡む。
ぼぼぼ、顔が一気に熱くなって、私は堪らず、そのまま勢いよく視線を逸らした。
──なに、この人。どういう意味で、どんな意図でそんなことを言ってきてるの。
「……に、匂い嗅いでるの、黒尾さんの方じゃないですか……」
こんなふうにわざわざ寄って匂いを嗅がれたことも恥ずかしいけれど、そもそも"いつも"って何だ。
「っや、ちがう。いや違わねえけど、今は確かに嗅ごうと思って嗅いだけど、いつも何もせずとも香ってくんだって!身長差あるから頭近いこと多いんだもん!」
私が思わず零した声を、大慌てで否定してくる黒尾さん。
さっきとまるっきり逆のこの構図に、……彼があんなに赤くなっていた理由がよくわかった。
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暁☆(プロフ) - 黒尾ファンさん» ありがとうございます、頑張ります🙇♀️ (4月15日 8時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - お手伝いは、聞いてない〜⁉ヤバこれは、現実でもキュンってするところ。うわぁもうヤバいしか言えないこれからも頑張ってください (4月13日 7時) (レス) @page25 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - yuuuさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです🥰 (4月11日 23時) (レス) id: f35ddf974d (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 黒尾ファンさん» 嬉しいコメントありがとうございます!頑張りますね💪 (4月11日 23時) (レス) id: f35ddf974d (このIDを非表示/違反報告)
yuuu(プロフ) - ドキドキ、きゅんきゅんでした💖だいすきです♡ (4月11日 19時) (レス) @page24 id: 6410d877bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2024年3月20日 1時