吐露 ページ8
『今の私と貴方は唯の審神者と刀剣男士の関係だけれど。
だからと言って、貴方との関係を淡白に済ますつもりは無いよ』
…あの審神者が考えている事が、全く理解出来ない。
俺があの審神者に対してどういう感情を抱いているか、知っているだろう。欠片の欠片もいい所だが、俺の本質を見抜いて触れてきたのは、向こうからだ。
ならば何故、あんな事を言ったんだ。言う必要があったんだ。
嗚呼、むしゃくしゃする。
嫌悪と憎悪が入り交じって仕方が無い。気持ちが悪い。
吐き出しようのないこの感情を発散するが如く、眼前に現れる遡行軍共を次々と屠っていく。斬る感触が刀を通じて手に伝わる。
慣れた戦場だ。単騎ではあるが敵に遅れを取るまでもない。
以前は確かにこの時代に赴いていたが、別に此処でなくとも良かった。
あの審神者に以前の出陣場所を聞かれた。それに答えたら此処へ赴く様に言われた。唯、それだけだ。
余計な事は言わない方が、己が身の為だ。嫌という程、それを実感してきた。
俺の力量では、此処の敵は少々容易過ぎる。別に驕っている訳では無い。紛れもない事実だ。
以前の審神者が、俺を、俺だけを贔屓するが為に、俺自身の実力より随分と下な場所へよく送られていた。
だが、俺としては、十分厚樫山を叩けるだけの力量はある。単騎でも十分だ。
あの汚らしい声で、俺が傷付くのは嫌だ、と。折れるのは嫌だ、と。
彼奴らを散々傷付けたその身で、その口で、何を語るか。
俺は、俺である事に、嫌気がさした。
遡行軍を斬り捨てながら。その返り血をこの身に浴びながら。ふと思い至った。
本来の俺とは正反対のこの色になってから、気付いた事がある。
黒でも存外、赤は映えるというものだ。
久方振りの出陣。行き先は随分と見慣れた光景の尾張国。
審神者の元に来たいきなりの出陣要請。相変わらず政府は余裕が無いようだ。
まあ、それも仕方が無いだろう。俺は刀剣男士として十分に戦える。
審神者から、怪我をしたら帰ってこい、無理な進軍はするな、と。折れるな、と言葉を貰った。
それらは以前の本丸に居た頃にも、よく聞いた言葉達だ。
けれど以前より、その言葉達に対する嫌悪感は無かった。全く不思議な話だ。
以前とは別の感情で、大人しくその言葉通りにしてやろう、と思った。
こんな事もあるもんだな、と俺自身何処か他人事だ。
相対する審神者が違うだけで、こうも心持ちが変わるものなのか。
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詩月(プロフ) - 冷泉 雪桜さん» コメント有難うございます。この文体で書くのは初めてなのでそう言って頂けて良かったです(*¨*) (2020年1月12日 9時) (
レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - 初コメ失礼します。素敵な文章でとても感情移入しやすいですね♪今後が楽しみです。頑張って下さい (2020年1月9日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩月 | 作成日時：2020年1月6日 19時
