願い ページ7
どうやら私は刀装を作るのが上手いらしい。これも研修中に分かった事だけど。
失敗する事も並や上が出来上がる事もなく、鶴丸に渡す為の重騎兵をすんなり3個作ってから、鶴丸の元まで戻った。
「お待たせ。はい、これ」
「嗚呼。然し、重騎兵は刀装の中でも資材を結構使う方だろう。良かったのか?」
「別にいいよ。暫くは他の誰かを迎えるつもりないし」
「そういうものなのか?」
「私はね」
鶴丸をこのままにして、他の誰かを迎えようとは思っていない。
彼を蔑ろにしてまで、する事では無い。
鶴丸が堕ちた理由は、きっと何かある筈だ。
今じゃなくていい。時間がかかってもいい。だけど私は、いつかそれが知りたい。
鶴丸から話してくれる迄、私はずっと待つつもりだ。
別に私は心理カウンセラーでもなければ精神科医でもないし、鶴丸みたいな千年も生きてる神様からしたらたかが小娘が、ってなるかもしれない。というか絶対なる。
けれど、私にだって譲れないものの1つや2つぐらいある。
そのうちの1つが、これなだけだ。
鶴丸の闇を知って、その闇から救いたい。
偽善だろうと何だろうと構わない。彼は私のたった一人の鶴丸国永だ。
それが今の私の、一番の目標であり、願いだ。
「ねえ、鶴丸」
「どうした?」
「今の私と貴方は唯の審神者と刀剣男士の関係だけれど。
だからと言って、貴方との関係を淡白に済ますつもりは無いよ」
「…………」
私が言ったことに、鶴丸はうんともすんとも言わない。
頭上にある鶴丸の顔を覗き込むように見上げれば、その顔は相変わらず何を考えているのか分からない。
表情に色が無いって、こういう事を言うんだろうなあ。
「行ってらっしゃい、鶴丸」
「見送りは結構だぜ?」
「私がしたいからしてるの」
あの後、結局鶴丸は私の言った事に何も言わないままだった。
別に何か返答が欲しかった訳では無いし、そうだろうとは思っていたからあまり気にしていないけれど。
鶴丸は見送りは要らないと言うけれど、此方は本丸で待機する、戦場には立たない立場だ。
せめてそれぐらいは言わせて欲しい。
「…鶴丸。少しでも怪我をしたら帰ってくること。無理な進軍はしないこと。この2つだけは守って欲しい。
貴方が折れるのは、嫌だ」
「…嗚呼、聞き届けた」
その言葉を最後に、鶴丸は門を潜った先にあるゲートにその姿を隠した。
行先は、尾張国__桶狭間の戦い__だ。
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詩月(プロフ) - 冷泉 雪桜さん» コメント有難うございます。この文体で書くのは初めてなのでそう言って頂けて良かったです(*¨*) (2020年1月12日 9時) (レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - 初コメ失礼します。素敵な文章でとても感情移入しやすいですね♪今後が楽しみです。頑張って下さい (2020年1月9日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詩月 | 作成日時:2020年1月6日 19時