今度 ページ9
あの審神者と相対する時は、無駄に気負いをせずに済む。
恐らく、あれ自身が審神者となってまだ日が浅いからだろう。審神者としての威厳は無いに等しい。
序でに言えば、以前の審神者と今度の審神者とでは、明確な違いが有るからだろうか。
三年間、政府で研修を受けていたというのは本人の口から聞いている。
だが、所詮は研修だ。見習いとして別個体の俺と関わりが有ろうと無かろうと、関係無い。
審神者としての力量は結局はその程度のものだ。
それに、俺とは随分と割り切って接している。
まあ、初日にああ言ってやったのもあるだろうが。
だが、それでいい。寧ろそれ以上余計な事はしないでくれ、とすら思う。
偶に声を掛けてくる事もあるが、それは専ら事務的な物ばかり。
流石にそれに答えてやらない程俺もそこ迄堕ちちゃあいないさ。
それ相応の立場である事の自覚があり、此方に過干渉をしない。
審神者としての在り方は、立派なものだろう。
この戦が長引くにつれ、審神者である事に驕る者が随分と増えた。
俺達 "刀剣男士" が本来は "何者で在るか" を、忘れた者が。
俺が一度も "主" と呼ぶ事の無かった奴も、典型的なそれだった。
以前の審神者の事を思えば、今度の審神者が随分とやり易いのは偽りようのない事実だ。
欲に塗れた目をしていなければ、その口から下卑た言葉が発せられる事もない。
態々ご機嫌取りをしなくて済む。
驕る事も無く、審神者というものがどういうものであるかを理解している。
まだ年若い娘だと云うのに、随分と聡明な事だ。
だからだろうか。今度の審神者に対しては、以前まで感じていた嫌悪や憎悪と言ったものを、さほど感じなかった。
あの一言がこの耳に届く迄は。
やりようのない感情を吐き出すかの如く遡行軍共を屠っていれば、気が付けば敵の本陣が目の前にあった。
少しばかり派手にやり過ぎただろうか、向こうも俺に気付いている様だ。
だからといって、さして気にする程の事でもない。
気付かれているなら、それはそれで好都合だ。態々裏手から攻める手間が省けるというもの。
向こうが仕掛けてくる前に、正面から殺ればいいだけの話だ。
視界の隅で、鈍色が輝く。果たしてそれは、どちらの物か。
「…嗚呼、派手にやり過ぎたか」
斬り所が悪かったのだろうか。随分と返り血を浴びてしまった。
顔にかかるのは、あまり気分が良いものでは無いんだがな。
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詩月(プロフ) - 冷泉 雪桜さん» コメント有難うございます。この文体で書くのは初めてなのでそう言って頂けて良かったです(*¨*) (2020年1月12日 9時) (
レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - 初コメ失礼します。素敵な文章でとても感情移入しやすいですね♪今後が楽しみです。頑張って下さい (2020年1月9日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩月 | 作成日時：2020年1月6日 19時
