いとなゆびかになつかしく/4 ページ28
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「 此処に居たんですね 」
「 おや?…随分息が切れていますね 」
「 相棒に任せて、走ってきたんです 」
「 そうですか。それじゃあ……答え合わせを、しましょう 」
ヨコハマが近付いて来ている。港の光や、船内の困惑も相俟って、此処、船外はとても静かだった。川端とフョードルは二人、夜の海を見下ろしていた。月が大きく、大きく見える。
「 私のチョーカー、見つけてくれましたか 」
「 はい。見つけたも何も、最初からぼくが持っていましたから 」
「 ……うわ性格悪い。何で今更、云う気になったんですか? 」
「 これを盗っても、貴女と相棒さんの仲を引き裂けないことが解ったので 」
何でもない風に云ってのけたその男は、川端の差し出した掌の上にチョーカーを乗せる。少し驚いて、川端はそれを自身の首に付けた。
「 でも、今回のことにフョードルくんは関係無いんじゃあ…… 」
「 関係有りませんよ 」
「 じゃあ、何で…銃弾が飛んできたタイミングと、私たちが喧嘩したタイミングはぴったりだったじゃないですか 」
「 ほう、そんなことが……ただの偶然ですね 」
「 え 」
月がぽっかりと海に浮かんでいる。ゆらゆらとその清かな光が揺れた。
「 それじゃあ何で、私と中也を? 」
「 順を追って話します。次の質問をどうぞ 」
「 ええっと、じゃあ、三島さんってどんな人ですか 」
フョードルは少し考えてから口を開いた。人一人分ほど間隔を空けて安全柵に寄り掛かる二人は、まるで世間話でもしているような佇まい。
「 彼は、とても孤独な男です。きっと貴女も聞いていたのでしょうけど、ぼくは一度この手で彼を
「 それじゃあ、何で今は一緒に行動を?……というか、殺したって、都内の病院に入院したとか聞いたんですけど 」
「 殺した、心算だったのですが。彼は今も、生きている。
「 私がここにいる…?あの、知能レベル下げて喋ってくれません? 」
その男は、少女のようにあどけなく、そして美しい女を見詰めながら、指を指す。あなた、ですよ。なんて、川端はその瞳を幾ら探っても真意なんて見えてこないことに既に気が付いている。
「 彼も、ぼくの友人になったので、ぼくたちは一緒にいました 」
「 ええっ、フョードル私以外にも友達居たんだ! 」
「 失礼な 」
「 にっ、睨まないでください、綺麗な人が怒るとこわい! 」
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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月19日 23時