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マスカレヰド!/3 ページ15

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『 誰が怪しいのか解らない。いまいち私達を殺そうとしている理由も見えない。これじゃあまるで仮面舞踏会(マスカレヰド)だね 』



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「 おや、着替えてきたんですか。Aくん、貴女のことは知っていますよ。 」

「 真逆、直ぐ後を追いかけているのに見失うなんて思いませんでした。えぇっと…… 」

「 嗚呼、名乗っていませんでしたね。初めまして、フョードル=ドストエフスキーと申します。気軽にフェージャとお呼びください 」

「 ドストエフスキーさん……長いな、ドスさん…ドスくん……否、フョードルくん。私達、初めて会うんじゃ、ないんでしょう 」


少し話しましょうか、とその男がカウンター席に腰掛けた。船の最下層に近いところにある、未だ営業を開始していないバーである。この人を見失った時に着替えてきたドレスは今日も矢っ張りピッタリだった。


「 ぼくは以前から貴女と話したいと思っていたんですよ。神がどんな気持ちで貴女を産み落とし賜うたのか、貴女が神の意思に反する異能を如何して授かったのか、興味があります 」

「 其れって悪口なのか褒めてるのか良く分からないんですけど、この船に居るのもどうせ四日間なのだから、口説いても無駄ですよ 」


確実に今のは悪口だった。というか存在を否定された。それを何食わぬ顔で云ってのけてしまうので、一言一言聞き漏らさないように注意しなければ。


「 ____Aくん。ぼくの、新しい友人になってください 」

「 え? 」

「 ぼくの内部のものが、貴女という人間(、、)への興味に、変わりました。Aくんにとってもその方が、これから楽しくなるでしょう? 」


そろそろ時間だ、とフョードルくんが立ち上がった。私の意志を問う為にワインの底の様な色の瞳が此方を見下ろしている。前に中也が飲んでいたワインの色に、似ていた。上層部から聞こえる賑わいに、その瞳を真っ直ぐ見詰める。


「 良いけど、後悔しないでくださいね、フョードルくん。裏切りは美徳とは云いますけど、そんなのは太宰でもう御免ですから。だから、あんまり騙したりしたら、嫌ですよ。絶交しますからね! 」


少し考えるように沈んだ魔人の瞳が、口角と共に上がる。まるで冥界のものであるかのように、その微笑みは酷く綺麗だった。暗くぼやんで来たバーの中で、時計が鐘を打つ。友人とさよならする合図には十分過ぎる大きさだった。


「 成程。それがAくんの願いならば、ぼくも従いましょう。それじゃあまた後で、此処で 」



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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年1月19日 23時

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