マスカレヰド!/2 ページ14
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「 糞ッ、開かねえ……! 」
その頃中原は、絶賛閉じ込められ中であった。
話は川端と別れたすぐ後に遡る。
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「 ……なんだ、これ 」
中原は、空いた客室をひとつずつ調べていた。
川端がドストエフスキーに接触しようと考える何てことは、長年一緒に居るのだから解っていたのだ。
ならば、自分は三島について探ろう。話に聞いたところ、川端は三島と何か深い因縁がある。何があったのかについては、川端は何も覚えていないそうだ。1番気になるのは三島の事なのに、外堀から埋めていこうとする所が如何にも彼女らしい。
__必ず彼らが潜んでいる部屋がある筈だ。地道に一部屋ずつ調べていく作業は、普段荒事ばかりの中原にとってかなり慣れない事だった。
「 三島の、正規書類…… 」
空いた客室のゴミ箱に、散り散りになって捨てられていた
( 若し、
彼女には云えなかった。太宰を信じきっている__否、太宰を信じたいであろう彼女には、万が一の時の為に自分がした最低の想定を話せなかった。
「 そんな面倒臭ェことになって、たまるか 」
刹那、ガチャリという音が響き渡って、中原は足の先から全身が冷えていくのを感じた。振り向いてドアの引手が少しずつ上がるのが見える。
( 真逆、最初から此処に閉じ込める心算で、誘き寄せるようにこの書類を__ )
嗚呼、今の時代カードキーではない扉。入るのが簡単なら、閉めるのも簡単であった。自分が気が付く事に相手も気が付かない訳が無い。裏を読んだ方が、勝ちなのだ。
そして、話は振り出しに戻る。
掌で躍らされている感じが拭えず、とても不快である。中原は、酷く苛苛して扉を殴りつけた。響かない低音に防音加工、つくづく用意周到である。
書類を丁寧に折り畳み、ポケットにしまい込んでベッドの上に深く腰を下ろした。
「 おい。どっから見てんのか知らねェが、俺は殺されねェ。彼奴も、俺が殺させねェよ 」
そう、ハッキリと口に出してから、中原はポケットの中に手を収め、立ち上がった。扉の前まで歩み寄るのに、飛ばないようにと帽子を片手で押さえる。
「 ……
呟くと、中原は扉を蹴り飛ばした。
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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月19日 23時